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年代測定のメカニズム
放射年代測定法の信頼性

Roger C. Wiens, Facts for Faith, Quarter4 (2001), Issue 7, 11-18

松崎英高(箱崎キリスト福音教会牧師)、テモシィ・ボイル(つくばクリスチャンセンター宣教師、物理学学士号、神学博士)共訳

【著者紹介】
著者のロジャー・C・ウィーンズは、隕石の同位体の比率に関して博士論文を提出しました。カリフォルニア工科大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校の地質学科で、海洋の岩石とダイヤモンドの同位体の比率の特性を調べる研究やNASAのスペース・ミッションで何が実現可能であるかに関する研究を10年間しました。現在は、ロス・アラモス国立研究所の宇宙及び大気科学部門で研究しています。20を超える科学研究論文を発表し、キリスト教の雑誌にも記事を出しています。ウィーンズ博士は、これまでメノナイトやバプテストや保守組合教会のメンバーでした。

【和訳】

関連文献:
原子、同位元素、放射壊変の解説
放射年代測定に関する専門用語

年代測定のメカニズム
放射年代測定法の信頼性

ジャネットは彼女の息子が恐竜の展示物を畏敬の念を抱いてじっと見ているのを、戸惑いつつ観察していました。表示板には、ティラノザウルス・レックスは何千万年も昔にいたと記されています。しかし、先週の日曜日に、彼女の聖書教師は、神はたった6,000年前に地球を造られたことを、強調していました。年令についての混乱が彼女の胃をむかつかせるほどになりました。彼女の前にある化石に割り当てられた年代は、創造の説明とは矛盾しているように思えます。そのせいか、ジャネットの心臓の鼓動はより速く脈打っています。地球は新しいのでしょうか、それとも古いのでしょうか。もし地球が古いのが本当なら、聖書が間違っているのでしょうか。それとも、科学者の方が誤ることがあり得るのでしょうか。それに、彼女は息子にどう説明するつもりなのでしょうか。

放射年代測定技術が、どのような年代測定法方式であっても、地球の年令についての疑問に答えるのに最も明確な証拠を与えることでは、科学者たちは一致しています。しかし、多くの人々は放射年代測定法の正確さを疑問視しており、いろいろな放射性年代決定技術についての誤った報告も豊富にあります。放射年代測定法に関するそれらの不可解で込み入った説明の偽りを暴くことは、一般的な原理についての単純な理解だけで事足ります。放射年代測定に関して持たれている共通した誤解に向けられた信憑性のある答えと聖書の適切な解釈は、ジャネットのような人々が、地球年令に関する天地創造の説明を納得するのを助けてくれます。

放射年代測定の一般原理

放射年代測定は、砂時計と比較されます。砂時計を引っ繰り返すと、砂粒は上から下に落ちます。特定の砂粒が砂時計のくびれを通過する瞬間は誰も予測できないが、砂がすべて落ちてしまう時間を予測できます。

同じようなプロセスが原子核の放射壊変でも起こります。(「原子、同位体、放射壊変の解説」を参照のこと)年代測定を可能にする時計とは、ある種の原子核があるタイプから別のタイプに変わる放射壊変のことです。放射壊変は、原子核内の陽子と中性子の不安定な組み合わせに起因しています。ほとんどの原子は安定した原子核を持ち壊変することはありません。しかし、あるタイプのものは壊変します。放射壊変が起こる時、どの原子がいつ壊変するかを予測することはできません。しかし、多数の原子核の場合、特定の時間に壊変する原子核の数が予測できます。元の(親)原子核は、異なる化学的性質を持つ娘核に変化します。

しかし、放射年代測定法と砂時計とでは、一つの重要な違いがあります。砂時計とは違って、岩石内での放射壊変の速度は、ある特定の時間での親核種の数(N0)にかかっています。親核種が少なければ少ないほど、壊変も少ないのです。もし放射性同位体の親核種の半分が壊変するのにある定まった時間(半減期)を要するとすれば、残った親核種の半分(元の親核種の1/4)が壊変するのにも同じ時間を要することになります。さらに同じ時間で、残った1/4の親核種は、その1/2だけ(元の親核種の1/8)壊変します。これは、図2の方程式と右下がりの曲線に示されるように、指数関数的な減小曲線を描きます。

Figure 1.

Figure 2.

すべての放射年代測定法は、この大変単純な式と指数関数的な減少曲線に基づいています。すなわち、Nは親核種の現在量、N0は親核種の初期量、tは時間、kは半減期に相当する定数です。この単純な方程式は、放射年代測定法の多くの異なった方式で通用するという事実があり、その式の信頼性を大いに確信させてくれます。

砂時計は、ひっくり返されてから経過したある決まった時間を計測します。放射年代測定法もまた、ある特定の出来事が起こってから経過した時間を計測します。火成岩(マグマか溶岩から形成される)の場合、この方法は融けたものが冷やされ岩になってから経過した時間を計測します。他の場合、ある特定の出来事とは変成するほどの加熱(例えば、地下での540℃以上の加熱)される期間の終わりであり、放射性炭素による年代決定では動植物が死んでからの時間の長さとなります。異なる年代測定法が採用されると、岩石やその他のものの年代を決定するために正確な時間測定方法が得られます。

放射年代測定法の正確さ
最初の放射年代測定法の研究は1910年前後に行なわれましたが、1940年代の後半まではその発展は比較的遅いテンポでした。今や、多くの年代測定法において50年に渡って検査、あるいは再検査がなされてきました。放射能検出器がその量が既知である親核種から一定の時間に壊変する原子核の数を数えるか、元々は親核種だけであった標本の娘核種と親核種に対する娘核種の比率を測ることによって、直接的に放射性同位体の半減期が測られました。50年で壊変する原子の数は全体からすると小さな割合ではありますが、娘核種の極めて精密な計測が可能です。

最も一般的に使用されている幾つかの放射年代測定法とそれらの半減期が表1に記されています。これら半減期の不正確さの程度はとても小さいものです。レニウムで±5%、ルテチウムで±3%、ベリリウムで±3%、その他はわずか±2%です 。1この正確さの程度では、年代測定には数%の変動はあるが、地球が最近創造されたのか、それとも大昔なのかに関しては疑問の余地はありません。しかし、正確に年代を計測するには、適切な年代測定法を選ばなければならないのです。

Table 1.

表1. 放射年代測定にもっとも一般的に使用されている親核種と娘核種のペアおよびその半減期

どの年代測定法が適切なのか?
多くの種類の機器が、日常生活で時間を計っています。ストップウォッチは100m走でタイムを計るのに使用されます。普通の目覚まし時計は人の睡眠時間を計るのに使用します。カレンダーはクリスマスまでの日数を数えます。カレンダーが100m走のタイムを計ることはできないし、ストップウォッチはクリスマスまでの日数を数えることができません。

他の時計と同様に、放射年代測定法は対象となる標本に適合していなければなりません。多くの人々には炭素14年代測定法は馴染みがあるが、この技術は骨や樹木や衣服や紙やその他の動植物の死んだ組織の年代決定をしますが、岩石の年代決定には無効です。半減期が標本の推定年代の1/10以内にある方法を使用すれば、通常最も良好な結果が得られます。前もって手掛かりがないということが稀にありますが、そんな場合、正確な年代を得るために一つ以上の方法を試すことが必要とされることもあります。最初の試みで不十分な娘核種しか計測できなかったなら、より短い半減期を持つ方法が試される必要があります。あるいは、もっと多くの娘核種が存在するようにもっと多くの親核種を含む標本が使用されるべきです。

次の段落で議論される年代測定法のほとんどは、火成岩がマグマや溶岩から冷やされ固くなってから経過した時間を決定するのによく応用されます。原子は通常マグマのような液体では十分に混合しています。溶けていたものが冷やされて固くなると、原子はもはや自由に動き回ることができません。岩が冷やされて後に起こる放射壊変によってできた娘核種は、それらが生じた岩石内に閉じ込められます。砂時計の底に貯まった砂粒のように、娘核種の数と残っている親核種の数を計測し、半減期を利用してそれらの娘核種ができる時間を計算することによって、岩の年代は決定されます。

しかし、年代測定に関して若干の問題点が残ります。娘核種が元々岩石に存在しなかったことを仮定することは妥当だとは限りません。それで、娘核種の初期量が決められなければならないのです。それぞれの年代測定法は、おのおのの方法でこの問題を解決することになります。特定のタイプの年代測定法がある岩石ではうまく行くし、他のものは他の岩石でうまく行きますが、それは岩石の構成と年代によって決められます。

個々の年代測定法の実例

40以上の放射年代測定法が有効的に使用されてきました。これら40以上の方法から、3つの方法の実施例を簡潔に取り上げて、それらがどれほど有効であるかを説明しましょう。

カリウム-アルゴン(K-Ar)法
地殻に豊富に含まれている元素であるカリウムの(天然に存在する)同位体の一つは放射性カリウム40で、それが決まった割合いで二つの娘核種に壊変します。そのうちの11.2%が気体であるアルゴン40に変わり、残りの88.8%がカルシウム40に変わります。岩石が溶解してマグマや溶岩になるときには、アルゴンガスは逃げていく傾向があります。溶解している岩石が固まる時には、カリウム40のそれ以降の壊変によってできるアルゴンは、岩石に取り込まれたままになります。このようにして、火成岩になる時に、カリウム-アルゴン時計がリセットされます。地質学者は単にカリウム40とアルゴン40の相対的な量を測ることによって、岩石の年代を決定するのです。

しかし、大気のアルゴンが取り込まれたり、深い地下での壊変によってできたアルゴンが漏れ出て来たりするせいで、岩石が固まる時に岩石に少量のアルゴンが残ったままになっている場合がしばしばあります。空気中のアルゴンは年代測定の計算に容易に補正されますが、地下からのアルゴンは、より古い岩石の溶解により漏れ出たアルゴン40をより高濃度に含んでいます。年代決定をしようとしている岩石やまた空気由来でもない親核種を持つアルゴン40は、「親なし」の起源不明のアルゴン40と呼ばれています。このような若干通常ではない場合は、K-Ar法によって得られた年代は、古く出過ぎます。しかし、1960年代の中ごろ、科学者たちはこの問題を回避する方法を提唱しました。すなわち、アルゴン-アルゴン(Ar-Ar)法です。

この方法が提唱されてから30年以上になりますが、年代測定法に批判的なグループはAr-Ar法について議論することはめったにありません。この方法は、K-Ar法と全く同じ親核種と娘核種という時計を使用しますが、結果的に時間の測り方が異なります。この方法はK-Ar法よりも正確ですし、起源不明のアルゴンによる影響も少ないのです。Ar-Ar法は、対象としている系がかき乱されたかどうかを判断できます。このような場合は、誤った年代が出されるのではなく、年代測定自体が無効となります。2

ルビジウム-ストロンチウム(Rb-Sr)法
K-Ar法とAr-Ar法を除いて、ほとんど全ての年代測定法においては、岩石が冷やされる時に、すでに娘核種は幾らか岩石の中に存在しています。これらの方法を使用することは、砂の全てが底に落ち切っていない砂時計をひっくり返して時間を測ろうとしていることに似ています。岩石が冷やされ固まり始めた時に、岩石内にすでに存在していた娘核種の量を正確に決める良い方法が存在します。  ルビジウム-ストロンチウム法では、ルビジウム87はストロンチウム87に壊変します。ストロンチウムの他の同位体は安定であり壊変によって生成しません。安定な同位体の一つであるストロンチウム86に対するストロンチウム87の比率は、より多くのルビジウム87がストロンチウム87に変われば変わるほど、また時間が経てば経つほど増加します。しかし、岩石が最初に冷やされる時、全ての同位体が液体のマグマの中でよくかき混ぜられているので、岩のすべての部分でストロンチウム87/ストロンチウム86の比率は同じです。岩石の中にある鉱石の幾つかは、他の鉱石よりもルビジウム/ストロンチウムの比率が高い状態で冷やされます。ルビジウムはストロンチウムよりも原子のサイズが大きいので、ルビジウムはある鉱石の結晶構造には馴染まないからです。このことは、他の鉱石でも言えることです。図3は、ルビジウム-ストロンチウム法に使用される重要な概念を表しています。

稀には、ルビジウム-ストロンチウム法で問題を引き起こすケースがあります。岩石がその主要な部分よりも古い鉱石を含むなら、年代決定は困難になります。時々、地中のマグマがマグマ溜りを通る時に、周囲の岩から不溶の鉱石を取り込むことがあります。通常、地質学者は、より新しい鉱石の中からこれら"捕虜岩"を見分けることができます。もし、たまたま岩石の年代決定にこれら捕虜岩を使用することになれば、これらの鉱石が示す点をグラフにプロットしたら、信用できないということがすぐわかります。岩石が変成を受けている時、すなわち、岩石は高温になるけれども、完全に溶解する(あるいは再溶解する)ほどには熱くならないなら、別の問題が起こります。これらの場合も年代決定を行なったら、矛盾が起きます。岩石の中のある鉱石は完全に溶解したが、他の鉱石は溶解しないままでまた冷やされることがあります。このような場合、ある鉱石は元のマグマの時代を示し、他の鉱石はそれ以降の変成作用を受けた時代を示します。これらの場合、同じ岩の中に矛盾する異なる年代があることになり、年代は決定されません。

Figure 3.

図3 ルビジウムとストロンチウムのアイソクロンプロット。縦軸はストロンチウム87/ストロンチウム86の比、横軸はルビジウム87/ストロンチウム86の比を表す。すなわち、この図は親同位体の比率に対する娘同位体の比率を示している。岩石が液体状のマグマから最初に固まった時、その中に結晶されたすべての鉱物は図3に示されたようにストロンチウム87/ストロンチウム86の比率は一定していることを意味する横の線にのっている。しかし、その横の線にある白丸が示すように、それぞれの鉱物はルビジウム/ストロンチウムの比率が異なる。液体状のマグマではストロンチウムとルビジウムのすべての同位体は十分に拡散している。しかし、結晶化する時には、ある鉱物はストロンチウムよりもルビジウムを優先的に取り込む傾向にある。時が経ると、その岩石の中のルビジウムは徐々にストロンチウムに変わる。それぞれの鉱石で増加したストロンチウムの量は、そのはじめにあったルビジウムの量に比例する。それぞれの白丸から出る破線の矢印は、この変化を表している。その矢印の長さは、ルビジウム/ストロンチウムの比率に比例している。ルビジウム/ストロンチウムの比率がストロンチウム87/ストロンチウム86の比率の増加に比例して減少するので、これらの破線の矢印は傾斜している。すべての標本に関して引かれた全線は、それゆえに、横軸に平行なラインから徐々に傾きの大きい直線になる。

すべての標本のどの時点でのラインも縦軸の同じ点で実線と交わる。ルビジウム87が何もないことを示すこの点は、図3で示されるように、ストロンチウム87/ストロンチウム86の比率の初期量を意味する。この点によって、各鉱石内に存在した娘核種であるストロンチウム87の初期量が決定される。それこそがまさしく、正確な年代を決定するために必要なものである。

直線の傾きもまた、岩石の年代とともに増大する。どの時点においてもすべての鉱物は一直線上に並んでいることに注意してほしい。これは年代が正しいことを保証する検査である。鉱物が直線にのらなければ、年代データは棄却される。

稀に、ルビジウム-ストロンチウム法が誤った年代に導くことがあります。これは、十分にかき混ぜられなかったために、ルビジウムとストロンチウムの割合の異なる部分を含むマグマから形成された岩石を年代測定する時に起こります。マグマのある部分では、ルビジウムとストロンチウムの割合が図3の上限に近い線に相当し、ある部分は下限に近い線に相当します。この場合には、鉱石はこれら二つの部分の混合物であり、結果として得られる組成は二つの部分に割り当てられる線の間に落ち着きます。これは、二成分混合線と呼ばれます。数万件のルビジウム-ストロンチウム法による測定がなされたが、この混合線が確認されたのは約30件だけです。

もしこの二成分混合線が疑われるなら、別の年代測定法がルビジウム-ストロンチウム法による年代決定の適正さを証明しなければなりません。何種類かの年代測定法が一致すれば、岩石の年代決定はより確実なものとなります。研究者たちは、同じ岩石でも多数の方法でなされた年代決定を比較してきたし、そして大変に古い標本でさえ近接した一致が見られました 。3

多くの年代測定法はルビジウム-ストロンチウム法と似ています。一般的な方法のうち幾つかを挙げれば、サマリウム-ネオジム法、レニウム-オスミウム法、ルテチウム-ハフニウム法があります。これらの方法はすべて、年代を決定するために、図3のように三つの同位体を用いた図表を使用します。それぞれの方法に違いがあるのは、元素のペアが含まれる鉱石のタイプと半減期の長さと使われる測定技術です。

ウラン-鉛(U-Pb)法とその関連する方法
1907年に最初に使用されたウラン鉛法は、最も長期に渡って使用されている年代測定法です。ウラン鉛系は、他の親核種-娘核種系よりも複雑であり、実際は幾つかの方法を一まとめにしたものです。天然のウランには元々、ウラン235とウラン238という二つの同位体があります。これらの同位体は異なる半減期で壊変し、それぞれ鉛207と鉛206になります。さらに、鉛208はトリウム232から作られます。岩石の年代についての三つの独立した推定が、鉛の同位体とその親核種同位体であるウラン235、ウラン238、トリウム232を測定することによって確定します。これらは、二つ以上の年代測定法間の調和や一致を確かめるためにしばしば使用されます。

消滅した放射性核種:寿命を終えた時計
砂時計の砂が落ち切った後に、砂時計自体にはいつそうなったのかを決定する方法はありません。同様に、かつては豊富であった放射性親核種がもう存在しないことが分かると、その核種が計測できる時間よりも長い時間が経っているということを意味します。この場合、親同位体は"消滅した"と言われます。

消滅した核種の数は、娘核種が通常より多くの量で存在することを測定することによって確定されで来ました。これらの測定は、太陽系の創造の直後にその親核種がかつては豊富であったことを示します。これらの親核種には、カルシウム41(半減期=13万年)、アルミニウム26(半減期=70万年)、鉄60(半減期=150万年)、マンガン53(半減期=370万年)、ヨウ素129(半減期=1,600万年)、プルトニウム244(半減期=8,200万年)があります。これら消滅した放射性核種は、太陽系がこれらの半減期よりも過去に創造されたことの決定的な証拠です。5億年より短い半減期を持つ核種が壊変し終えるほどには古い過去ではあるが、それよりもかなり長い半減期を持つ放射性核種がなくなってしまうほど過去でない時期に、地球は創造されました 。4このシナリオは、一時間で終わる砂時計の砂はまだ時を刻みつつ落ちているが、ゆで卵用砂時計の砂は落ち切ったことに相当します。

問題を解決する
放射年代測定法は、実験室で計測された秒、分、日、年という比較的短い時間区分から、他の信頼できる年代指標との比較で調整された数千年という時間区分、異なる年代測定法の比較によって確認された何百万年という時間区分まで、その信頼性が証明されてきました。ある人々は、はるか彼方の過去からの資料が信用できるのかと疑問視します。しかし、年代測定法を信用することは、他の歴史上の出来事を信頼することに似ています。なぜ、人々はアブラハム・リンカーンが存在したと信じているのでしょうか。彼が存在したことをでっち上げるためには、偽造物やねつ造された写真や虚偽の引用やその他諸々の事柄を含む、極めて念入りに仕立て上げられた企みが必要です。簡単に言えば、リンカーンの実在を信じることは、彼の存在が作り話であると信じることよりもはるかに合理的に思えます。放射年代測定法の状況は、それと似ています。ただ、歴史的記録の調査ではなくて、岩石が含む資料の調査がその歴史を明らかにするのですが。複数の放射年代測定法による確証は、その有効性を大変に強力なものとします。

  1. 放射年代測定法は、天文学的な時間区分と一致しています。5天文学においては、壊変速度が不変であることは、異なる距離にある恒星を研究することで容易に調査できます。これらの距離は光が旅をした時間の差、すなわち、天文学的年代を現わしているので、天文学者は各天文学的年代において壊変の速度が変化したかどうかを観察できます。彼らの研究はその不変性を明らかにしました。その不変性は、放射年代測定法が確立されていることを確信させてくれます。
  2. 放射年代測定法の信頼性を支持する膨大な数の証拠が、サイエンス(Science)や ネイチャー(Nature)や地質学の専門誌のような定期刊行物で発表されてきました。1999年だけでも、放射年代測定法に関する1,000以上の論文が、地球の大変古い年代において、本質的に一致しています。
  3. ほとんどの岩石は、実質的には閉鎖系です。ある懐疑論者は、どんな岩石も完全には閉鎖系ではないと言って、地質学的年代を退こうとします。例えば、岩石はそれらの環境から隔離されておらず、その結果として年代測定法に使用される同位体が逃げ出したり入り込んだりした、と言うのです。極端に厳密な議論をすれば、確かに正しいかもしれません。しかし、ほとんどすべての岩石の場合に、1兆のうち1つの原子が漏れ出す程度であり、そのような小さな変化は結果的に測定不能です。過去40年間に書かれた多くの本が、年代測定法が適用できる正確な条件を詳しく述べています。
  4. 方程式の指数部分には変数が二つしかないこと(半減期と時間)が、放射壊変の式を極端に簡単なものにしています。20世紀において、壊変速度が自然に遅くなって事実に反する年代に導いたという証拠は何もありません。以下の議論は、誤った"見掛けの"年代という観点から出た発想を無意味なものとします。方程式に基づけば、実際よりも年代が古く見えるためには、すべての核種の半減期が互いに同期して変化しなければなりません。異なる年代測定法のすべてが一致しているので、半減期のすべてが遅くなっていなければならないのです。そのようなことが起こることは、あたかも時間そのものが遅くなるようなものでしょう。
  5. 放射年代測定法は、それが発見されるずっと前に割り当てられた年代を指し示す示準化石に基づいているという思い違いがあります。本当は、放射年代測定法は過去40?80年に渡って計測された放射性同位体の半減期に基づいているのです。化石が年代の基準になったのではありません。放射年代測定法が最も使用されるのは火成岩であり、化石は堆積岩で見い出されるのです。
  6. 壊変速度は、過去50?80年に渡って直接計測がなされてきました。ある場合、一まとまりの量の純粋な親核種の重さが測られ、長い間保存されました。それから、その結果として生じた娘核種の重さが測られました。しばしば、放射壊変は、それぞれの壊変が放出するエネルギーによって、より容易に検出されます。この検出のために、一まとまりの純粋な親核種の重さが慎重に測られ、それから、長期間に渡って壊変の数を計測するガイガー・カウンターかガンマ線検出器の真正面に置かれました。
  7. もし壊変速度が不完全にしか知られていないなら、年代は不正確になり得ます。しかし、岩石を年代決定するために使用される壊変速度のほとんどは、約2%以内の誤差で知られています。誤差がこれより若干高めに出るのは、レニウムで5%、ルテチウムで3%、ベリリウムで3%です。6このような小さな誤差は、放射年代測定を放棄する理由とはなりません。岩石が1.00億年前のものか、1.02億年前のものかは、ほとんど差はないのです。
  8. 年代決定に使用する方程式に指数関数が使われているので、半減期の小さな誤差が年代においては大きな誤差になると信じている人々がいます。実際は、半減期の2%の誤差は、年代においても2%という小さな誤差です。
  9. 核力の小さな変化が数千年前のある期間に原子核の時計を速め、古い放射年代を見せ掛けていると、ある人々が主張しました。それらの年代測定法はその形成期にあった岩石の年代決定をするのですから、そのような核力の変化は地球や岩石が形成された後に起こっていなければなりません。年代に差が出るためには、半減期は数十億年から数千年に、少なくとも100万倍の単位で減少しなければなりません。このような半減期の短縮は大きな物理的な影響を引き起こしたはずです。例えば、地球が放射壊変によって相当加熱させられたりしています。放射壊変が100万倍の単位で速くなったのなら、膨大な熱の衝撃が、問題としている岩石を含めて全地球は容易に溶解していたことでしょう。
  10. ある人々は親核種の半分がなくなる半減期ではなくて、親核種のすべてがなくなる"全消滅期"を計測すべきであると提案しています。残りの砂の量と関係なく変わらない速度に落ちる砂時計の砂とは違って、放射壊変の数は残っている親核種の量に比例します。図2は半減期が2回経過した後(1/2×1/2=1/4)の挙動を示しています。10回の半減期が経過すると、残りは2-10=0.098%となります。科学者は時々"平均寿命"という言葉、すなわち親核種の平均寿命を換わりに使用することがあります。平均寿命は常に半減期の1/ln(2)=1.44倍です。ほとんどの人々は半減期の方が容易に理解できるのです。
  11. 年代決定に使用される岩石に、地球や他の惑星で起り得る熱や寒さや真空状態や加速や強い化学反応にさらしても、放射壊変速度には有意な差は生じません。
  12. セントヘレンズ山の噴火(1980年)によってできた岩石の年代決定の不正確さに基づいて、放射年代測定法が信用できないという主張がなされてきました。年代決定をした研究所はその岩石を数百万年前と報告しました。このことは、放射年代測定法が信用できないことを意味するのでしょうか。適切な手順が守られた時には信頼できないことはないのです。岩石の標本に単一の方法が不適切に使用されるなら、放射年代測定法は"いんちき"になり得ます。誰だって不正確な時間を示すように、時計の針を動かすことができるのです。同様に、不正確な放射年代を積極的に捜すなら、それらを見つけることができるのです。しかし、火成岩に対して同時に複数の方法を使用する年代測定法は、通常は信頼に値するものです。
  13. ある人々は、放射壊変で生じたヘリウムやアルゴンは地球の内部から漏れ続けているので、地球は新しいに違いないと主張します。しかし、放射性の親核種であるウランやカリウムは、表1に示すように大変長い半減期を持っています。これらの親核種はなおも存在して、地球内部にヘリウムやアルゴンを余剰に産生しています。さらに、娘核種の生産とその漏出(ガス噴出)の間には、時間のずれがあります。もし地球が地質学的に新しいのなら、これまでほんの僅かなヘリウムとアルゴンしか産生されなかったことでしょう。証拠は何を示しているのでしょうか。研究者は、現在の大気中のアルゴンと46億年に渡ってカリウムが壊変することによって推定されるアルゴンの量を比較しました。そして、両者は一致していたのです。
  14. 無神論者と聖書の無誤性を放棄する者のみが放射年代測定法に信頼を置くという考えは、根拠のない憶測に由来しています。しかし、科学時代のルーツは、神の被造物が検証可能であり、信頼性があり、組織的な研究をする価値があると考えたことに遡ることができます。神の自己啓示を詳述するのは特殊啓示としての聖書を通してだけでなく、一般啓示としての被造物を通してでもあるということが、そのような研究の中心的な理念なのです。他の多くのクリスチャンたちは、神が地球を創造されたのは数千年前ではなく数10億年前であったという痕跡を放射年代測定法が実証したと、確信しています。多くのクリスチャンが放射年代測定法の分野で働いています。

神のことばは科学的結論を認証する
放射年代測定法の信頼性を受け入れることは、神のことばの霊的な無誤性や歴史的な無誤性と矛盾することと同じとは見なされません。多くのクリスチャンは、『日』とは本当は長い期間であるとすることが、創世記1章の適切な解釈だと見なしているのです。  詩篇の作者は神の創造の範囲に驚きました。今日、神の創造における奥の深さと大きさは、時間的次元においても空間的な次元においても、畏敬の念を起こさせるような創造者の属性をさらに明らかに語ります。天はまさに主の栄光を現わし、地は実に神の御手のわざです。放射年代測定法は神の力の大きさを証言します。すべての科学的事実とそれに関連する聖書のすべての段落を注意深く考察することで、ジャネットのような人々は地球の年代と聖書的創造の詳細の正当性を、ともに理解できるようになります。科学と聖書の両者が、ジャネットが自分と息子のために必要であった答えを与えてくれるのです。

(つくば研究学園都市にある地質調査所で隕石の研究をしている木多紀子博士には、専門家の立場からより良き翻訳のために貴重な意見をいただき感謝します。)


Endnotes

  1. Norman E. Holden, "Total Half-Lives for Selected Nuclides," Pure Applied Chemistry 62 (1990), 941-58. Alan P. Dickin 著、Radiometric Isotope Geology (New York: Cambridge Press, 1995); Gunter Faure著、 Principles of Isotope Geology, 2nd ed. (New York: Wiley, 1986) のような地質年代学の教科書も参照のこと。
  2. Roger C. Wiens, Radiometric Dating: A Christian Perspective, ASA Web site (1995) http://www.asa3.org/ASA/resources/Wiens.htmlで利用可能。脚注1に紹介した教科書の参照のこと。
  3. Wiens; G. Brent Dalrymple, The Age of the Earth (Stanford, CA: Stanford University Press, 1991)
  4. 半減期が数百万年よりも短い同位体は存在します。しかし、それは、常に宇宙線によって新たに生成されたか(特殊なケースで、例えば表1の下から3番目までのもの)、同位体そのものがウランのようにより長い半減期を持つ親核種からできた娘核種であることが原因になっています。
  5. Hugh Ross, Creation and Time (Colorado Springs, CO: NavPress, 1994). 邦訳 『宇宙創造と時間』 いのちのことば社 (1999年)
  6. Holden, 941-58; 脚注1で紹介した地質学的年代の教科書を参照のこと。