「ジャンク」DNAは、それほど「ガラクタ」ではない

“JUNK” DNA NOT SO JUNKY; CONNECTIONS, Vol.2, No.1, p2, (2000)

ブリティシュ・コロンビア大学(UBC)の研究者たちによる最近の報告で、非コードDNA(一般的に、「ジャンク」DNAとか「利己的」DNAと 呼ばれる)は役立たずではないことを示す、新たな証拠が提供されました。それどころか、非コードDNAは、複雑な細胞の中では必須な機能を持っているら しいのです[1]

核や細胞内の膜に結合している小器官や区画を持つ複雑な細胞のDNAの容積は、原生動物や菌類や動植物の間で、約8万倍ほどの極めて大きな差異が あります。このDNA容積の広範囲に及ぶ変化は、非コードDNAが存在する結果なのです。非コードDNA、あるいは「非特異的」DNAは、生物のDNA の総容積(ゲノム)の30%からほとんど100%を占めています[2]

生命を厳密な意味で自然過程の働きとして説明しようとする人々は、非コードDNAが偶然に生じたと提唱してきました。それは、単に物理的にくっつ いているという理由で、機能している遺伝子に付随する「ジャンク」であり、あるいは、生物のゲノムの中で機能を持たない寄生者であることから、「利己 的」なのです[3][4]。「ジャンク」あるいは「利己的」DNAは、偶然の自然過程から予想される不完全さを例証して おり、進化論的生物学者の間ではお気に入りの見解です。

しかし、1978年にさかのぼる話ですが、ある研究者たちは、非コードDNAが実際は機能的な役割を果たしているかも知れないと提案しました。彼 らは、非コードDNAが細胞核の容積を決めるというモデルを発展させました[5]。細胞の全容積が増加するにつれて、 核の容積、すなわちDNAの量もまた、核の外側にある細胞質との効果的な連携に必要な核の容積を提供するために増加しなければならないのです。

UBCのチームは、クリプトモナド(藻類)の研究で、非コードDNAの有用性を裏付ける実験的な根拠を発見しました [6]。非コードDNAは、細胞の全容積に比例した核の容積を維持しているように思えます。さらに、彼らは、「ジャン ク」または「利己的」モデルに反論する証拠を見出しました。ヌクレオモルフ (nucleomorph)と呼ばれる特殊化した細胞の部分は、自然主義的モデルが予想するものとは裏腹に、「目的論的」モデルがまさに予想するような 振舞いをしました。

ゲノムや非コードDNAについては、研究すべきところがまだ多く残されています。しかし、明らかなことは、新たな発見がなされるごとに、非コード DNAを含む生物のゲノムが盲目的な偶然のプロセスによって集まってできたという発想の可能性が少なくなり、ゲノムは知的設計者の働きである可能性が増 すということです。

{この記事が書かれた後に、研究がさらに進み、2013年現在、

引用文献

1 Margaret J. Beaton and Thomas Cavalier-Smith, “Eukaryotic Non-Coding DNA is Functional: Evidence from the Differential Scaling of Cryptomonad Genomes,” Proceedings of the Royal Society of London B, 266 (1999), pp. 2053-2059.

2 Wen-Hsiung Li, Molecular Evolution, (Sunderland, Massachusetts: Sinauer Associates, Inc. Publishers, 1997), pp. 379-401.

3 W. Ford Doolittle and Carmen Sapienza, “Selfish Genes, The Phenotype Paradigm and Genome Evolution,” Nature,284, (1980), pp. 601-603.

4 L. E. Orgel and F. H. C. Crick, “Selfish DNA: The Ultimate Parasite,” Nature,284 (1980), pp. 604-607.

5 T. Cavalier-Smith, “Nuclear Volume Control by Nucleoskeletal DNA, Selection for Cell Volume and Cell Growth Rate, and the Solution of the DNA C-Value Paradox,” Journal of Cell Science 34, (1978), pp. 247-278.

6 Beaton and Cavalier-Smith, pp. 2053-2059.

Updated: 2013 年 06 月 16 日,06:02 午後

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