人類の起源に関する進化論的な観点

ファザール・ラナ

Facts for Faith quarter 4, 2001, Issue 7, 35

松崎英高(箱崎キリスト福音教会牧師)、ティモシー・ボイル(つくばクリスチャンセンター宣教師、物理学学士号、神学博士)共訳

人類の進化を説明する現在のモデルでは、現生人類は突然変異に自然選択が作用して遺伝的に改良されることによって、より原始的なヒト科の動物(ヒ ト科の原始的な種類)から段階的に出現するようになったとされています。進化論的な生物学者たちは、このプロセスはヒト科と類人猿が類人猿に似た共通の 祖先から分岐したと推測される600万年前に始まったと考えています[1]

アウストラロピテクスは、化石の記録では450万年前から150万年前に、初めて二足歩行をする霊長類として出現しました[2]。ヒト科の多様な種類を含むアウストラロピテクス属は、類人猿と同じサイズの脳を持ち、頭蓋と顔面と歯の特徴や胴体 と上肢が類人猿のものと類似しており、それに、現生人類のものとは明らかに区別される限定的な二足歩行の能力があります[3]

最近まで、古人類学者たちは、アウストラロピテクスを現生人類に至る進化的な経路の一端をなすと考えていました。しかし、350万年前と年代測定 されたヒト科の新しい属であるケニアントロプスの発見に伴い、今論争の的になっているのは、人類の起源におけるアウストラロピテクスの役割についてです[4]。ある古人類学者たちは、ケニアントロプスが二足歩行する霊長類であるヒト属の祖先であるという考えを提案していま す[5]

明白なアウストラロピテクスとそれに近い関係にある属であるパラントロプス(初めは頑丈型アウストラロピテクスと考えられた。)との進化的な関係 について、古人類学者たちに見解の一致はありません[6]。しかし、後者はそのサイズが比較的大きいことと他にも独特な際立った特徴があることから、古人類学者は頑丈型アウ ストラロピテクスを別の属に分類しなおしたのでした。古人類学者は、パラントロプスを進化的な袋小路と見なしています。これらの生物種を配置することに ひどく困惑しているところを見ると、どのアウストラロピテクスが二足歩行するヒト属になったのかに関して、古生物学者たちの見解は明白ではありません。

二足歩行をするヒト属が初めて化石記録に現われるのは、200万年前です。伝統的には、ホモ・ハビリスが最初の二足歩行をするヒト属であり、アウ ストラロピテクスはヒト属とを結ぶ主要な移行種と見なされました。しかし、H.ハビリスは、ホモ・エレクトスのような他のヒト属よりもアウストラロピテ クスに近い特徴を持っていることが再認識されたため、アウストラロピテクスに分類しなおされました[7]。このような新たな理解がH.ハビリスの移行種としての立場を著しく弱めています。こうして、ヒト科の系統発生にお ける断絶という問題が残されたままになっているのです。

ホモ・エレクトスとホモ・ネアンデルターレンシスは、現生人類に最も近い関係にある二足歩行する霊長類です。しかし、最近の研究では、現生人類と H.エレクトスの繋がりがほとんど切断され、ネアンデルタール人と現生人類との関連は完全に切断されてしまいました[8]。H.エレクトスはアジアに限定されているので、古人類学者たちはますますそれを進化の袋小路に至る進化系統樹の側 枝と見なすようになりました。また、三体の異なるネアンデルタール人の遺骨から分離されたDNAの分析は、ネアンデルタール人が現生人類の遺伝的構成に 何の寄与もしていないことを示唆しています。

アウストラロピテクスと同様、二足歩行をするヒト属のいろいろな生物種は、今より過去200万年間のほとんどの時期にも生存していました。古生物 学者たちは、ヒト属の各生物種間の進化的な関係について意見の一致に至らず、また、現生人類の直接の祖先を決めることができないでいるのです[9]。にもかかわらず、多くの進化生物学者たちは、これらの生物種には互いに関連があり、現生人類の失われた祖先がいつ か発見されるだろうことを確信しているのです。

引用文献

1 Richard Morris, The Evolutionists: The Struggle for Darwin’s Soul(New York: W. H. Freeman, 2001), 34-37.

2 B. A. Wood, “Evolution of Australopithecines,” in The Cambridge Encyclopedia of Human Evolution, paperback edition, ed. Steve Jones, Robert Martin and David Pilbeam (New York: Cambridge University Press, 1994), 231-240.

3 Roger Lewin, Principles of Human Evolution: A Core Textbook(Malden, MA: Blackwell Science, 1998), 241-282.

4 Meave G. Leakey et al., “New Hominid Genus from Eastern Africa Shows Diverse Middle Pliocene Lineages,” Nature410 (2001), 433-40; Daniel E. Lieberman, “Another Face in Our Family Tree,” Nature410 (2001), 419-20.

5 B. Bower, “Fossil Skull Diversifies Family Tree,” Science News159 (2001), 180.

6 Lewin, 297-307.

7 Bernard Wood and Mark Collard, “The Human Genus,” Science284 (1999), 65-71; B. Bower, "Redrawing the Human Line," Science News155 (1999), 267.

8 J. M. Bermudez de Castro et al., “A Hominid from the Lower Pleistocene of Atapuereca, Spain: Possible Ancestors to Neandertals and Modern Humans,” Science276 (1997), 1392-95; Ann Gibbons, “A New Face for Human Ancestors,” Science276 (1997), 1331-33; Fuz Rana, “Up (and Away) from the Apes,” Connections1, no. 2 (2000), 3-4; Hugh Ross, “Neandertal Takes a One-Eighty,” Facts & Faith11, no. 3 (1997), 4-5; Fazale R. Rana, “DNA Study Cuts Link With The Past,” Connections2, no. 3 (2000), 3; Fazale R. Rana, “Neanderthal Genetic Diversity: From Missing Link to Special Creation,” Facts for Faith(Q4 2000), 5.

9 Lewin, 385-428

Updated: 2006 年 11 月 02 日,04:26 午後

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