絶滅した甲殻動物が現代に語り掛けること

"Reasons To Believe"(信仰の根拠)が発行した"Connections" (2001年, vol.3, no.2, p.1)からの翻訳。

松崎英高(箱崎キリスト福音教会牧師)、ティモシー・ボイル(つくばクリスチャンセンター宣教師、物理学学士号、神学博士)共訳

【Author】Fazale R. Rana

【Title】Extinct Shell Fish Speaks Today

【Literature】Connections, 2001, Vol. 3, No. 2、1.

中国の帽天山(マオティエンシャン、訳注・)頁岩より出土した海水甲殻類であるイソクシス(訳注・)の化石についての最近の研究は、創造論を支持する重要な証拠を新たに提供してくれます。その研究によって、発達した多細胞生物が地球上に突如として出現した、カンブリア紀の爆発として知られる時期に、複雑で広範囲な生態系が存在したことが明らかにされました[1]。生物進化という自然過程では、真正の多細胞生物が最初に爆発的な出現をしたことと連携して、高度に発達した生態系が同時に出現したことを説明することができません。ところが、聖書的創造論はそれら化石記録の特徴と容易に調和するのです。

生命の歴史における劇的な出来事であるカンブリア紀の爆発(約5億4000万年前)は、200~300万年かそれ以下という地質学では極めて狭い時間帯で起こりました。カンブリア紀の爆発というその期間に、これまで地球上に生存した、ほとんど全ての門(70以上)が突然に出現したのです[2]。その時以来、恐らく間違いなく動物の門は一つも新たに出現しませんでした。進化論的な生物学者たちは、カンブリア紀の爆発を生物学上最大の謎の一つであると考えています[3]

1986年に、シモン・コンウェイ・モリスは、厄介な問題をさらに指摘しています。捕食動物と捕食される動物との識別可能な関係を含めて、カンブリア紀の生態が現代における海洋の生態系と類似していたことは明白です[4][5]。進化論的パラダイムでは、そのような早い時期には、限定的で漫然としか張り巡らされていない生態系が予想されます。さらに、進化論的モデルでは、外洋を始めて占有する(外洋性の)動物が出現するかなり以前に、海底に生息する(底生性の)動物の出現があったことが予想されます[6]。生き残るために外洋を利用するためには、生物は浮力と移動を可能にする生体メカニズムの特殊化を発達させなければなりません。また、その外洋において、それらは十分な濃度の栄養分を必要とします。

進化論モデルに従えば、底生性の動物がカンブリア紀初期に出現し、それからかなり遅れて外洋性生物が続いたはずです。海底に生息する生物相互の捕食関係が激化することが、海生動物が外洋に移動するための進化の推進力であったと推測されます。外洋という環境はより大きな安全を提供し、捕食動物の攻撃から逃れさせてくれます。さらに、底生性生物の営みにより、やがて外洋での栄養価が増大し、結果的にはこのニッチ(生態的地位)を占有する道筋が付けられたことでしょう。

フランスと中国の古生物学者の二人からなる研究チームは、これらの進化論的な予想とは著しい対照を成す発見を発表しました[7]。そのフランス人と中国人の古生物学者は、絶滅して久しい海洋性の甲殻類(イソクシス)の、身体の軟らかい部分の保存状態がとても良好な、利用可能であった化石種を再調査することによって、イソクシスは外洋という環境に住んでいたことを見出しました。そのイソクシスには、泳ぐための付属器官や視覚器官、さらに外洋に生息する生物に期待されることに全く合致する甲殻構造が見られました。

カンブリア紀初期の岩石からイソクシスの発掘に成功したことは、この発見をさらに顕著なものにしました。外洋のライフスタイルは、底生性のライフスタイルから進化したということはあり得ません。むしろ、その化石記録は、外洋と海底の利用が同時に生起したことを示しています。さらに、イソクシスの甲殻構造には、前部から後部まで分布した長いトゲが見えます。これらのトゲはイソクシスの浮力に寄与したわけではなかったことでしょう。それ故に、それは外洋性の捕食動物の脅威に対抗する防御機構として働いたに違いありません。こうして、再び進化論的には予測できない発見に遭遇します。

古生物学者たちがカンブリア紀の生態の理解を深めるほどに、その時期の生態系が複雑で、広範囲で、全体的に高度に統合されたものであったことを裏付ける証拠がますます見出されるのです。カンブリア紀初期の最初から複雑な動物は、それらが十分な範囲の生態学的なニッチを利用できるために、驚くほどに発達した能力を持っていました。カンブリア紀の化石記録は、発達した多細胞生物が聖書的な創造者の御業の結果であるという結論を支持しています。

訳注

  • 昆明市の南約50kmの澄江(チェンジャン)市郊外にある。澄江動物群の化石が最初に発見されたのがこの山。
  • 学名はIsoxys auritus。節足動物門甲殻亜門(エビ・カニの仲間)。海洋の甲殻類の一種で、目の付いた長い柄が1対、触角が2対、エラと足が11対ある。化石の中には、通常残りにくい触角などがはっきりと残っている貴重なものもある。

引用文献

1 Jean Vannier and Jun-Yuan Chen, “The Early Cambrian Colonization of Pelagic Niches Exemplified by Isoxys(Arthropoda),” Lethaia33 (2000): 295-311.

2 Fazale Rana and Hugh Ross, “The Cambrian ‘Explosion’ and Why It Means So Much for Christians,” Facts for Faith(Q2 2000), 15-17.

3 Simon Conway Morris, “The Cambrian ‘Explosion’: Slow Fuse or Megatonnage?” Proceedings of the National Academy of Sciences,USA97 (2000): 4426-29.

4 Simon Coway Morris,“The Community Structure of the Middle Cambrian Phyllopod Bed (Burgess Shale),” Paleontology29 (1986): 423-67.

5 Steven J. Gould, Wonderful Life: The Burgess Shale and the Natureof History(New York: W. W. Norton, 1989), 222-24.

6 Philip W. Signor and Geeret J. Vermeij, “The Plankton and the Benthos: Origins and Early History of an Evolving Relationship,” Paleobiology20 (1994): 297-319.

7 Vannier and Chen, 295-311.

Updated: 2006 年 11 月 02 日,04:35 午後

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