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ファザール・ラナ博士 "Ethiopian Hominid No Threat to Origins Model"( By Fazale (Fuz) Rana, Ph.D. ) RTBのWebサイトに記載 松崎英高(箱崎キリスト福音教会牧師)、テモシィ・ボイル(つくばクリスチャンセンター宣教師、物理学学士号、神学博士)共訳 マーク・トゥエインは自分の死亡広告がニューヨークジャーナルに出た時、「私の死亡報告はかなり大げさだった」と言い返しました。ネイチャー誌がエチオピアでのヒト科の動物(二足歩行する霊長類)の新たな発見を報告した時に、Reasons To Believe (RTB)は、若い地球の創造論を提唱する団体から出された自らの“死亡広告”を見ることになりました[1]。これに関連して先ず言えることは、その団体の代表は残念なことに、化石やその地質学的及び考古学的状況を記述しているネイチャー誌の二つの論文にある資料を両方とも誤解したということです。にも拘わらず、これらの新たに発見されたヒト科の霊長類を「ヒュー・ロスの信念に対する厳しい一撃」であると説明し、「‘漸進的な創造論を主張する陣営’によって困惑をもって受け取られて」いるはずだと、結論しています。さらに、RTBは「‘化石人類’に関して大変に苦しい立場に追いやられる」ことになるだろうと、彼らは主張しました[2]。要約すれば、エチオピアで発見された化石は現代人のものであるが故に、その発見は人類の起源と拡散に関するRTBの聖書的モデルを無効なものにした、と彼らは主張するのです。しかし、これは本当なのでしょうか。これらのエチオピアでの発見を考慮に入れた場合、人間の起源に関するRTBのモデルはそれをどう説明するのでしょうか。 人類の起源に関するRTBモデル人類の起源に関する聖書に基づいたRTBモデルは、アダムとエバを実際に存在した歴史上の人物(最初の人間)と見なします。従って、このモデルは、全人類は遠くない過去(7万年以内)に、神の命令により神のイメージに創造されたアダムとエバの子孫であると、主張します。このようなわけで、人間は神によって造られた他のすべての生き物とは著しく異なっています。(詳細については、「創世記の謎を解く」[3]を参照してください。)もし、人間が神の特別な創造行為の結果として、神のイメージに造られているのなら、人間が出現する以前のヒト科の動物については、聖書的な観点はどう説明するのでしょうか。RTBモデルは、これらの動物を解剖学的にも行動様式的にも現代人(ホモ・サピエンス・サピエンス)とは区別される別個の種と見なします。これらの動物は神によって創造されましたが、その後で絶滅してしまったのです。創世記1章は、これらヒト科の動物に特定の言及をしていません。それで、それらは他の陸生哺乳類とともに、恐らくは創造の第六日に造られたと推論するべきです。 科学的なデータはこの見解と一致しています。ヒト科の動物の化石は、サヘラントロプス属、オリオン属、アルディピテクス属、ケニヤントロプス属、アウストラロピテクス属、パラントロプス属に帰属されました。それらはすべて、限定的な知性と人間とは異なる二足歩行の能力を持っていた猿に似た生き物でした。限られたケースでは、極めて粗野な道具を使用していたかも知れません。ホモ・エレクトゥス(直立猿人)やホモ・ネアンデルタレンシス(ネアンデルタール人)や“原始的な”ホモ・サピエンスのようなヒト科の動物は、直立歩行をし、粗野で単純な道具を使用し、限定的な知能を持ち、情緒的な能力さえ表現しました。しかし、それらは霊的な能力を持ってはおらず、神のイメージに造られた人間とは見なすことができません。アダムとエバの子孫(ホモ・サピエンス・サピエンス、あるいは、解剖学的及び行動様式においては現代人)と化石記録に出てくるヒト科の動物の違いは、形態的な差だけでなく、行動様式における差でもあるのです。 古人類学者たちは、ネアンデルタール人や他のヒト科の動物が宗教的な活動をしていたという、考古学上の記録からの議論の余地のない明白な兆候を見出してはいないのです[4]。それらの行動上の識別できる他の側面もまた、同様に人間のものではありません。ヒト科ホモ属は道具を使用したが、それらは粗野であり、現代人が使用する精巧な道具とは質的にはっきりと区別されます[5]。 エチオピアでの発見それでは、ネイチャー誌の論文には、RTBモデルに“厳しい一撃”を加えるようなことが記載されているのでしょうか。簡単に言えば、何もないのです。カルフォルニア大学バークレイ校の古人類学者ティム・ホワイトに率いられたチームが発掘して記載したエチオピアでの発見とは、主に三つの頭蓋(大人のもの二個、子供のもの一個)です。放射性年代測定技術(アルゴン-アルゴン法)を使用して、研究チームはその化石を16万年前から15万4千年前と年代決定しました。その研究チームは、三つの頭蓋の解剖学的構造を“原始的な”特徴と“現代的な”特徴のモザイクであると解釈しました。その年代と解剖学的特徴の故に、研究者たちはエチオピアの標本を、“原始的な”ホモ・ロデシエンシスとホモ・サピエンス・サピエンスの間の中間的な位置に帰属させ、新しい亜種であるホモ・サピエンス・イダルツ(Homo sapiens idaltu)と分類しました[6]。しかし、古人類学者たちは、ホモ・サピエンス・イダルツが現代人とは解剖学的に明白に区別されるとすることにおいては、極めて明瞭です。古人類学者たちの二つのチームが別個に行なった最新の研究は、この結論を確認しています。50万年前から10万年前に存在したホモ・サピエンスは、イダルツと同様に、形態的に(解剖学的に)現代人とは明白な区別があるのです[7]。 さらに、研究者たちは、その化石化した頭蓋が見つけられたのと同じ地層で、石の加工品をも発見しました。これらの“道具”は、解剖学的及び行動様式上の現代人によって使用された道具に見られる精巧さに欠けていました。それどころか、これらの加工品は、ホモ・エレクトゥスやネアンデルタール人の粗野で原始的な技術を示していました。また、大型の哺乳動物の遺骸が、そのヒト科動物(イダルツ)の化石の近くで見つかりました。これらの哺乳類の化石から推測されることは、恐らくはイダルツによって、それらが捕獲されて屠殺されたことを指し示していました。研究者たちは、イダルツの頭蓋には、それらが死後に肉を剥がされたことを示唆する変形を報告しています。それは、ある程度の知力を示していますが、現代人と特定されるレベルのものではありません[8]。 ホモ・サピエンス・イダルツとRTBモデルRTBは「“化石人類”に関して大変に苦しい立場に追いやられる」のではなく、ホモ・サピエンス・イダルツの発見は、RTBの人間起源モデルの枠組みの範囲内で、それが予測する方向と調和しています。この観点から、ホモ・サピエンス・イダルツはホモ・エレクトゥスやネアンデルタール人や他の“原始的な”ホモ・サピエンスと同様に、直立歩行をし、限定された知能を持ち、ある種の“文化”を持つが、動物以外の何者でもない単なる霊長類なのです。すべてのデータがこの解釈を支持しています。ホモ・サピエンス・イダルツは、解剖学的にも行動様式においても現代人(ホモ・サピエンス・サピエンス)とは明確に区別される存在ですし、ネアンデルタール人よりも年代的に古いのです。 イダルツに見られる“原始的”及び“現代的”特徴の組み合わせは、RTBモデルにとって何の問題にもなりません。ある意味では、すべてのヒト科の動物は現代人に似た特徴を持っています。ホモ・サピエンス・イダルツも例外ではないということです。ホワイトのチームは、これらヒト科の動物に見られるモザイク性を移行型の指標と解釈していますが、他の解釈も同様に理にかなっています。人間のデザイナーが二つ以上の明確に区別できるデザインを組み合わせて、作品や装置を創作することは、異例なこととは言えません。創造者が同じように創造してはいけない理由があるのでしょうか。さらに、進化論者たちは、モザイクな器官をいつも移行中間型と解釈するわけではありません。カモノハシがこのケースです。この生き物は、哺乳類と鳥類の特徴を併せ持っています。しかし、哺乳類が移行型であるカモノハシを経て、鳥類から進化したとは、進化論者たちは提案しないのです。 RTBの人間起源モデルに関して言えば、ホモ・サピエンス・イダルツの発見は、もし何かしらの影響があったとしても、わずかばかりの興奮を引き起こす程度のものです。それで、RTBがこの発見という重みに圧倒されて死んでしまったというレポートは、「かなりおおげさだった」ということなのです。 引用文献1 Carl Wieland and Jonathan Sarfati, “Ethiopian ‘Earliest Humans’ Find: A Severe Blow to the Beliefs of Hugh Ross and Similar ‘Progressive Creationist‘ Compromise Views,” June 12, 2003, http://www.answersingenesis.org/docs2003/0612sapiens.asp. 2 Wieland and Sarfati, http://www.answersingenesis.org/docs2003/0612sapiens.asp. 3 Hugh Ross, The Genesis Question: Scientific Advances and the Accuracy of Genesis, 2d exp. Ed. (Colorado Springs, CO: NavPress, 2001), 107-15.(和訳:「創世記の謎を解く」、いのちのことば社、p. 104-111) 4 Eric Delsen et al., eds., Encyclopedia of Human Evolution and Prehistory, 2d ed. (New York: Garland Publishing, 2000), 615-17. 5 ヒト科によって使用された道具に関する一般向けのものとして、Richard Klein and Edger Blake, The Dawn of Human Culture (New York: John Wiley and Sons, 2002)を参考にしてください。学術的なものとして、Richard Klein, The Human Career, 2d ed. (Chicago: The University of Chicago Press, 1999)を参考にしてください。 6 Tim D. White et al., “Pleistocene Homo sapiens from Middle Awash, Ethiopia,” Nature 423 (2003), 742-47; J. Desmond Clark et al., “Stratigraphic, Chronological and Behavioral Contexts of Pleistocene Homo sapiens from Middle Awash Ethiopia,” Nature 423 (2003), 747-52. 7 Daniel E. Lieberman et al., “The Evolution and Development of Cranial Form in Homo sapiens,” Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 99 (2002), 1134-39; Erik Trinkaus, “Neanderthal Faces Were Not Long; Modern Human Faces Are Short,” Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 100 (2003) in press (PNAS Early Edition). 8 Tim D. White et al.; J. Desmond Clark et al. |