他の惑星に生命は存在するのか?地球外知的生命体の探査

ヒュー・ロス作「宇宙の起源」十五章より、ティモシー・D・ボイル翻案

この宇宙にある他の惑星に生命は存在するのだろうか。この疑問は、地球以外の惑星が存在することが明らかになってからというもの、多くの人間が抱いてきたものだ。ほんの80年前までは、知的生命体が火星に存在している可能性が検討されていた。それも、当時の天体望遠鏡だと水路を思わせるようなものが火星の表面に見えたからだ。もちろん、今となっては、火星には知的生命体など存在していないことは周知の事実であるし、生命そのものの兆候すら見られていないのだ。(数年前に発表された、火星から来た隕石に生命体が存在していた証拠というのは、今ではほとんどの科学者に否定されており、火星を直接に調査しなければ答えられない疑問なのである。)では、この宇宙に存在する無数の星の周囲にある他の惑星はどうだろう?そのうちいくらかは、生命維持に必要な条件を満たしていると考えるのは、常識ではないだろうか。

この考えはSETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence地球外知的生命体の探索)という企画の動機のひとつなのだ。四十年程前に始まり、宇宙から発せられるラジオ電波を探知し、そこに進んだ文明を示すものがないかどうかを調べているのだ。また、我々より進んだ文明と接触することによって、地球とそこに住むものたちを蝕む問題が解決されることを望んでいることも、たしかだ。

著名な天文学者であるカール・セーガンは、初めてこの宇宙で生命維持が可能となる惑星の数を推定しようと試みたグループの一員であった。1966年には、生命に必要最低限な環境を作りだすには、最適な星から最適な距離を持った惑星でなければならないことがわかっていた。この二つの条件のみを考慮に入れただけで、すべての星の0.001%が生命を維持できる惑星を持っているだろうと推測された。とても小さな数字に思えるが、私たちの銀河系に約一千億個の星があるとされているのだから、銀河系だけでも生命の存在しうる場所が百万もあることになるのだ。もちろん、このような数字がSETIリサーチに莫大な資金を費やした根拠となるのだが。  

しかし、この推測は他の多くの要素を考慮に入れていなかったため、あまりにも楽観的な数値であった。生命を維持するには、それらの要素が狭い範囲内になければならないのだ。

最も適している銀河

まず、天体物理学によると、生命維持が可能な星を作り出せるのは、我々の銀河系のような渦巻き型の銀河だけだという。いまだ渦巻き型の形を保っている銀河が、宇宙全体のたった約6%であることからして、銀河の形という条件だけを見ても、最低でも全体の90%の星がこの議論から除外される。

このように結論するには、理由がいくつかある。しかし、基本的には、宇宙発展の過程で重元素(要するに、炭素やカルシウム、鉄など、ヘリウムよりも重いもの)がどのように形成されていくかに帰着する。生命が存在するには、十分な量の重元素がなければならない。楕円型銀河では、星の形成は重元素が十分に出来上がる前に停止してしまうので、地球のような岩石型惑星の形成が極めて困難だ。また、他の銀河や球状星団(銀河の中や周辺に存在する十万個ほどの星から成る球状型集合体)では星の密度が高すぎるため、結果的に不安定な軌道や高度な放射線の放出が引き起こされ、生命維持が可能な惑星が存在し得ない環境になってしまうのだ。

地球の岩石に含まれている重元素は、何十億年も昔に巨大な星で生まれ、超新星爆発によって宇宙に飛び散ったものだ。やがて、その時の残骸が、私たちの太陽系を形作る時に取り込まれていったのだ。渦巻き型銀河がまだ若いうちに、このような超新星爆発が頻繁に起こっていなければ、十分な重元素が作られなかった。更に、超新星爆発が今も頻繁に起こっているとすれば、それが地球に近いところで起こる場合、それによって引き起こされる高いレベルの放射線によって生命は危機に晒されることになっていただろう。このシナリオは、銀河系の成り立ちに関して現在知られている最良のモデルと大変よく合致している。

銀河が生命を維持するためには、星を作り続けることによってその渦巻き型の形状を保つだけでなく、中型の大きさでなければならいこともわかった。銀河系よりも小さな銀河では、重力場が弱すぎ、超新星爆発から出た塵の大部分を外に逃がしてしまう。小さな銀河で起こる超新星爆発によって作られた重元素の大半は、銀河間空間に出てしまい、よって後に惑星形成に関わることがかなわなくなるのだ。逆に、銀河系よりも大きな銀河では、地球のような惑星が生命を育むには、おそらく放射線が多すぎるのだ。

地球のような惑星が壊滅的な超新星による放射線に晒される頻度は、銀河内での位置によって左右される。まさしくこのことや他の要因のゆえに、渦巻き型銀河の中心部からちょうどよい距離にあり、渦巻状の「腕」と「腕」(渦状腕)の間の限られた領域にある惑星でなければ生命は長期的に存在し得ないのだ。渦巻き型銀河の腕は、塵やガスの継続的な流入と、それによって引き起こされる活発化した星の形成によって維持されている。星の形成が停止すると、渦巻きの構造が崩れ、銀河は楕円型になる。太陽が「共回転半径」と呼ばれる位置に存在していることが最近明らかにされた。これは、銀河の中心部を一周期二億年で周回する太陽の軌道が、星の塵の雲が高密度に存在する渦状腕に飲み込まれずにいられるということだ。渦巻状の腕と腕の間にある星で太陽より銀河の中心に近い位置にあるものは速度が速く、そのためやがて渦状腕に追いつくが、反対に太陽より銀河の就寝から遠い位置にあるものは速度が遅いため渦状腕に追いつかれてしまう。どちらの場合でも、他の星との接近が起こり、それによって惑星の軌道が乱れ、放射線も多くなってしまう。このようなシナリオでは、少なくとも高等生物の終焉を意味している。

最も適した星

生命のためには特定の銀河が必要なだけでなく、生命を育む惑星を持つ恒星もまたちょうどよいものでなければならない。そのような惑星を長期間維持するには、もってこいの大きさと年齢を持つ単一の恒星(すなわち重星でないこと)でなければならないのだ。銀河系の約75%の星は、二つ以上の星が互いを周るグループを構成している。そして、そのような重星を周っている惑星は安定した軌道に乗れないので、それらの星は自動的にリストから省かれてしまう。

星が生命を維持できる惑星を持つには、特定の質量もなければならない。太陽より質量の大きい星は、たとえ銀河の中心部からちょうどよい距離に位置していても、かなり速く、また不規則に燃えるため、生命を長い間維持できない。しかし、逆に太陽より数パーセントでも質量が小さい星でもだめだ。星の質量が小さければ小さいほど、放射される熱が少なく、そのため惑星が生命に適した温度を維持するには、星により近い軌道を周らなければならない。だが、これではまた別の問題にぶつかるのだ。星と惑星の距離が狭まれば、その間の潮汐摩擦作用が劇的に強まるからだ(距離の4乗に反比例する)。このため、惑星と星の間隔が地球と太陽のそれよりもわずかでも小さいと、惑星の自転周期が潮汐摩擦作用に左右されて急激に遅くなってしまうのだ。地球の自転周期自体、毎年ほんの少しずつ遅くなっているが、ほんのわずかに小さな太陽の周りを数パーセントだけでもより近く周っていたならば、もっと急激に自転周期が遅くなっていたことだろう。この場合、昼間が何時間も長くなり、少なくとも高等生物が存在するには、昼夜の気温差も激しくなり過ぎてしまう。

星が生命の存在できる惑星を持つには、銀河の歴史の中でもってこいの時期に形成されることも重要だ。その時期より早すぎても遅すぎても、生命化学のために必要な重元素がちょうどよい割合で存在することもなかった。また、そういう星は「中年」でなければならない。なぜなら、「中年」の星でなければ十分安定した燃え方をしないからだ。

たとえ最も安定していて、数億年に及ぶライフサイクルの中で最も安定した時期にある星であっても、生命に危害を与えるほどに光度が変動する。地球に初めて生命が現れた38.6億年前よりも、現在は太陽の光度が15%ほど上昇していると推定されている。他のすべての条件が揃っているとしても、そのような変化があってはよほど耐熱性のある微生物以外の生命は絶滅していただろう。しかし地球で生命が存在し続けたのは、太陽光度の緩やかな上昇とちょうどよいバランスを取る形で、地球の温室効果の減衰が起こったことによる。これは、地球上の生命が増えるにつれ、大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度を減少させていったためなのだ。

地球の生物圏は、強烈な寒さと強烈な暑さの間で微妙なバランスを保っている。これまでの氷河期や温暖化は、それほど気温差がなかった。もし、地表の平均温度がこの気温の範囲が許すものよりほんの数度でも低くなってしまうと、雪や氷が増え、簡単には融けなくなる。雪や氷は他の地表物質に比べて太陽エネルギーを効率よく反射するので、地球の平均気温がさらに下がってしまう。これでは、氷原が増え、それによって地表の温度が低下してしまい、やがて非常に低い気温に安定するまでこの悪循環が続いてしまう。

反対に、安定した気温が保たれる範囲より平均温度が高くなってしまうと、逆の悪循環に繋がる。大気中に水分と二酸化炭素が増え、温室効果が高まり、地表の温度が更に上昇し、これが非常に高い気温に落ち着くまで続くのだ。

太陽光度の15%もの増強にもかかわらず、地球の温度が高等生物を維持できる範囲内に保たれたのは、まさに驚異である。これも、適度な量の新しい生命体が地上にタイミングよく徐々に取り入れられ、大気を変化させることで増大する太陽放射熱の影響を打ち消していたため、可能となった。生命が完全にダーウィン的な自然プロセスを通して誕生し、進化していったと言うならば、このプロセスは一体どのようにして太陽の燃え方などというものを計算に取り入れたというのだろうか。バランスが少しでも崩れていたら、地球の温度は低すぎていたか暑すぎていた。これらの状況は、理論上は何らかの劇的な出来事(たとえば広範囲に及ぶ火山活動など)により逆転することもありうるが、ともあれそのような環境では、単純な生命しか生存できないのだ。

生命を維持できる惑星には、ちょうどよいタイプの星が必要なだけでなく、その星の位置もまた重要となってくる。上記で示したように、そのような星は他の星の重力に惑星の軌道を乱させられないよう、渦状腕の間の「共回転半径」に位置していなければならない。

銀河の共通する重力の中心点を旋回する星は、銀河の平均平面から相対的にある程度の上下にずれて運動している。大きな銀河ならば、その活発な中心部は高レベルの透過力の高い放射能(X線など)を放射しており、直接これにさらされると、地上の高等生物を破滅に追いやる結果となる。中心部から太陽ほど離れた星でも、間に介在する塵の雲がなければ、高レベルの放射能に晒される。この防御壁ともとれる塵の雲は、銀河平面に豊富に存在している。(このため、銀河の中心の方向への我々の視界が不明瞭なものになっている。)もし星の軌道面に対して上下のずれ運動が大きすぎると、軌道の特定の期間、塵の雲による保護領域を出てしまう。実際、ほとんどの星がこのようにして軌道の途中、銀河の中心部から発せられる高レベルの放射能に晒されているのだ。太陽はこの上下のずれ運動が小さい、ほんの一握りの星のひとつであり、保護域からはみ出ることがないのだ。

最も適したタイプの惑星

生命化学は、液体の水が存在できる環境が絶対条件である。つまり、惑星が最適の温度を保つには、親星からの距離がある狭い範囲内になければならない。地球の場合は、もし太陽からの平均距離が実際の数値とたったの2%違えば、それによる温度変化によって、生命が絶滅してしまう。

惑星の重力の強さが「脱出速度」の決め手となり、惑星の温度によって分子がその速度に達するかどうかが決まる。従って、この二つの要素(加えて、太陽風など)によって、大気中のどの気体が宇宙空間に脱出し、どの気体が大気中に残されるかが決まるのだ。惑星が生命を維持するために、大気中の水蒸気(分子量18)を逃さずに、メタン(分子量16) とアンモニア(分子量17)を除く必要がある。これは、重力や温度のほんの少しの差でうまくいくかどうかが決まる。

地球の重力と温度は水蒸気を大気中に保ってメタンとアンモニアを大気中から追い出すのに適しているが、メタンとアンモニア(双方とも生命にとって有害)は脱出速度が示すよりも速く消えている。これは、大気の上層部の化学環境が、まだ大気中に残っているメタンとアンモニアを速く分解するのに適しているからだ。

生命を維持する惑星の自転周期も重要だ。地球の一日24時間というのは、高等生物に最も適している周期なのだ。これよりも周期が長ければ、昼夜の気温差が大きくなりすぎてしまう。逆に、もっと高速に自転していれば、風速が壊滅的に大きくなってしまうのだ。(風速は気圧の違いだけでなく、「コリオリの力」というものによって決まる。これは、惑星の自転周期に基づいた要素だ。)

地球の自転周期は10億年ごとに2~4時間遅くなっていると推定されている.近年わかってきたのが、この変化のペースすらも地球の生命誕生とその維持にとって重要なファクターのひとつであるということだ。このペースが遅ければ、地球はより大きな太陽から(上記で説明したように、大きな太陽では燃え方が不安定なため)より遠くに位置していなければならないということだけではなく、早期の地球における生命の発展に負の影響を与えていたのだ。なぜなら、生命の維持に適した環境が生み出されるには、一日の時間が著しく短い状態が必要だったからだ。より自転周期が速ければ、低気圧がもっと強くなっていた。このため平均風速はかなり大きいものになっていたが、海中の原始生命にはたいした影響はない。また、速い自転周期は、低気圧を赤道付近に集中させて昼と夜の気温差を小さくしていた。これらの要因の結果、地球では生命の発展に欠かせない比較的に暖かい気候が実現されていたのだ。

最も適した月

地球の月もまた、生命維持に大きく関わっている。太陽系にある惑星の衛星の中でも、月はユニークな天体だ。親惑星に比べて、月は他の衛星より遥かに大きいのだ。この結果、月の重力は地球にかなり大きな影響を及ぼし、そのおかげで潮の干満があり、沖合いの海水が浄化され、栄養分が補給されるのだ。さらに、地球の軸の傾斜度を安定させ、一番理想的な23.5度が保たれる。というのも、複雑な生態系が存在するのに必要な広範囲の地帯が保証されるのがちょうど23.5度前後なのだ。地球の軸の傾斜度がこれよりかなり違っていたら、気候の極端な地域が増え、高等生物の生息地が狭まってしまう。

親星と近距離にある比較的小さな惑星を周回する巨大な衛星の存在は、最近まで大きな謎であった。この「二重惑星」の誕生に関するいくつかのシナリオ(同じ太陽系星雲のガスから形成された;地球の重力に捕獲された;高速自転する原始の地球からもぎ取られて月となった)は、どれもコンピュータ・シミュレーション・モデルによって完全に不可能であるとされた。唯一、可能なシナリオが「衝突説」であり、これは火星サイズの天体が原始地球にちょうどよい角度とスピードで衝突し、地球の周囲に塵の層を作り、やがてこれが集結して月になったという説だ。月の岩石の構成物などに関する多くの謎を解明できることから、現在もっとも有力視されているのがこのシナリオなのだ。このシナリオだと、姉妹惑星である金星のように、地球の大気が濃密なものにならなかった理由も説明できる。このような衝突があれば、おそらく濃密だっただろう原始地球の大気の大部分を吹き飛ばし、現在のような薄い大気の誕生に繋がったのだろう。基本的に、惑星の質量が大きければ大きいほど、また親星からの距離が遠いほど、より濃密な大気になるはずだ。となると、地球の大気は金星の大気より濃密なはずだが、実際には、遥かに薄いのだ。

最も適している周辺の惑星

地球の生命維持の適性に、太陽系の他の惑星が関係しているとは、普通は考えないだろう。しかし、地球上の生命に対し、木星とある程度で土星が極めて重要であることが、最近発見された。地球形成の段階では、彗星や小惑星の衝突が頻繁に起きていて、そのおかげで生命に必要な重元素が地表に豊富になったわけだが、一度生命が誕生すると、そのような衝突は高等生物の発展を極度に制限していただろう。

実際、これが起こらないためには、木星の質量と位置が極めて重要なのだ。理論上、木星の影響なしでは、6500万年前に恐竜を絶滅に追いやったと同じような衝突が起こる可能性が千倍になるというのだ。木星は太陽系惑星の全質量の71%を占めている。これは地球の質量の314.5倍にも及ぶ。木星はその強大な重力によって、1994年7月のように彗星を吸い込んでしまうか、あるいは彗星の軌道を変えさせて太陽系より送り出してしまうのだ。木星の質量が少なかった場合、地球を小惑星衝突から守る盾としての役割を果たす機能が著しく低下していた。かと言って、木星の質量が実際よりも多かった場合、その重力によって地球の軌道が乱れ、生命維持が可能な範囲から外れてしまうのだ。

もう一つ重要なのは、木星と土星(こちらは木星以外の太陽系惑星の全質量の3/4を占めている)の軌道のほぼ円形に近い楕円率が、地球の安定した軌道には欠かせないということだ。木星か土星のどちらかの軌道の楕円率がもっと高ければ、重力による影響で地球の軌道は変化してしまい、高等生物にとっては不適切な環境を作り出してしまうのだ。

では、木星の存在と、木星と太陽系の関係は、どのように特殊なのだろうか。最近、比較的近辺にある星の位置における小さな摂動から、木星サイズ、あるいはそれ以上の惑星の存在が確認された。しかし、親星にかなり近いところを廻っているので、地球のような惑星がその星系に存在している可能性はない。また、これまで発見された太陽系外の惑星の軌道は楕円型のものばかり。まだ決定されたわけではないが、楕円率の低い軌道を描く惑星を持ち、親星の近くに大きな惑星がないという、太陽系で見られるようなパターンは典型的なものではないようだ。

こうして見る限り、銀河や星、他の惑星、衛星などの特徴の細かい微調整によって、地球が生命を育むための下準備がなされていたことがわかる。惑星が長期間生命を維持するのに狭い範囲内におさまるべき要素が、天文学の文献にはすでに100以上見つかっている。下記に、その部分的なリストを記した。括弧内の数字は、生命が存在する可能性の側から見て、その要素が必要範囲内に収まる推定確率である。例えば、0.1であれば、銀河、星、惑星などのうち、その特定の要素に基づいて生命を育む可能性があるものは10%だけであることを意味する。

惑星の生命維持に関する天文学的要素

1 銀河タイ プ (0.1)

楕円形になってしまった(つまり渦巻き型でなくなった)場合:新しい星の誕生できる状態が早く終わり、その後に形成される惑星に生命が必要とする重 元素が十分に存在しないことになる。

不規則銀河の場合:重元素が十分に作られていないうえ、どの場所においても、時として、浴びせられる放射量が多すぎる。

2 銀河の大きさ(0.1)

小さすぎる場合:重力場が弱すぎて、超新星爆発によってできた重元素の大部分が逃げてしまう。重元素は慣性力だけで銀河間に飛び出してしまい、惑星 の形成時に役立つことができない。

大きすぎる場合:高等生物が存在するには放射能レベルが高すぎる。

3 超新星の位置とタイミン グ(0.01)

銀河系の形成の過程において、超新星の発生の位置が近すぎる、頻度が多すぎる、またはタイミングが遅すぎた場合:惑星に存在している生命が放射能に よって破滅される。

超新星の発生の位置が遠すぎる、頻度が少なすぎる、またはタイミングが早すぎた場合:惑星が誕生する際、生命が後に必要とする重元素が足りなくな る。

4 連星系の白色矮星(より大きな星を周る、きわめて高い密度を持つ非常に高温で白色の光を放つ小さな星。)生命科学が必要とするフッ素が作り上げ られる類の核融合は、この白色矮星の二重星にしか存在しない。(0.05)

この種類の二重星が少なすぎる場合:後に形成されていく惑星に取り入れられ、生命化学を可能にするために十分なフッ素が作られない。

逆に、多すぎる場合:全体的な星の密度が高すぎて、惑星の軌道が長期的に安定できないことになり、生命も存在できない。

銀河の形成の過程でこの種類の二重星が起こるタイミングが早すぎた場合:フッ素が効率よく形成されるための十分な重元素がない状態を招く。

逆に、タイミングが遅すぎた場合:惑星の形成時までにフッ素の生産が間に合わない状態を招く。

5 親星の位置。様々な理由で、渦巻き型銀河の渦状腕の間に位置する恒星でなければ、生命を維持できる惑星を持てない。同時に、この親星-惑星シス テムは共回転半径に位置づけられていなければ、その好ましい位置を維持できない。(0.00001)

渦状腕の中に位置している場合:星の密度が高すぎるため、放射線レベルが上昇し、惑星軌道が不安定になる。

我々の太陽より、銀河の中心部から離れている場合:地球のような惑星を形成するのに必要な重元素が足りず、渦状腕が親星に追いつく時に、渦状腕に飲 み込まれてしまう。

太陽より中心部に近い場合:上記と同様に、星の密度の高い渦状腕に飲み込まれ、好ましい位置を長期間維持することはできない。

6銀河中心部を周る星系システムの銀河平面から上下にそれる運動の度合 (0.1)

銀河の中心から発される極端に強い放射能から保護してくれる塵の雲から飛び出るほど上下にそれる運動が大きいと、惑星は一周期につき二度(約1億年 ごと)この保護領域より外に位置することになる。放射能にさらされては、高等生物の生存には壊滅的だ。太陽は銀河平面からそれほどずれることのない数少 ない星のひとつだ。

7惑星システム内にある星の数(0.2)

二重星を周る惑星では安定した軌道を保つことができず、生命を維持することはできない。また、惑星がエネルギー源となる星をまわっていないなら、当 然生命にとって寒すぎる。このため、生命を維持する惑星は孤立した星を周っている必要がある。

8 親銀河に対する親星の誕生時期(0.2)

太陽よりかなり遅い場合:その星はまだ安定した燃焼段階になっておらず、高等生物を維持できない。

太陽よりかなり早い(その銀河の歴史の中でも早い段階で形成された星である)場合:地球のような惑星を形成するに必要な重元素は不十分だった。

9 親星の年齢(0.4)

太陽よりかなり若い場合、また古い場合でも、安定した燃焼段階に入っていないため、光度が急激に変わりすぎる。

10 親星の質量(0.001)

太陽より少しでも大きい場合:核融合が激しくなりすぎて、燃焼速度が速すぎ、光度が不安定になる。

太陽より若干少ない場合:惑星が生命維持を保ち続けられるための星からの距離の範囲が狭くなりすぎて、たとえ適切な温度を維持できるちょうどよい距 離を持つとしても、自転周期を遅くさせる潮汐摩擦力が極端に強くなり、自転周期が早いペースで遅くなる。

11親星の色(表面の温度による)(0.4)

太陽より赤い(低温)、また青い(高温)場合、星から放射されるエネルギーの波長を表す「釣鐘型曲線」のグラフがその温度の変化によってどちらかの 方に動く。そうなると、植物が有機物質をつくるという、光合成によるプロセスが悪影響を受けてしまうのだ。なぜなら、惑星の表面に地球と同じ適切な温度 を保つには、星の放射エネルギーの総量も太陽と同じでなければならないのだが、その全放射エネルギーのうち可視スペクトルが占めている割合が変わり、光 合成の効率が低くなってしまうからだ。その上、ある程度の紫外線も必要だ。しかし、太陽の温度が少しでも低いならば、紫外線の量がかなり減り(従ってあ る種の栄養分が作られる効率が低下してしまう)、太陽の温度が少し高くなれば、紫外線の量がかなり増える(これは細胞の破損に繋がる)。(当然、これは オゾン層にも影響される)

12 親星の光度変化と惑星での生命発展の関係(0.0001)

二酸化炭素などの濃度を低くすることによって温室効果を低下させる生物の到来が遅すぎる場合:光度の増加によって地球の温度も上昇して、温室効果の フィードバックが加速され、悪循環的に暴走してしまう。

温室効果を低下させる生物の到来が早すぎる場合:温室効果の低下が早すぎるため、地球の温度が低くなり、悪循環的暴走によって氷河期となりかねない。

13アルベド、反射率(惑星表面が星の放射光を反射する効率)(0.1)

地球よりかなり高い場合:悪循環的に暴走してしまう氷河化が起こる。

地球よりかなり低い場合:悪循環的に暴走してしまう温室効果が起こる。

14 親星からの距離(0.001)

惑星が最適な距離より少し遠い場合:平均気温が低いため安定した水循環を保つことができなくなり、悪循環的に暴走してしまう氷河化が起こる。

惑星が最適な距離より少し近い場合:平均気温が高いため安定した水循環を保つことができなくなり、悪循環的に暴走してしまう温室効果が起こる。

15 惑星表面の重力(脱出速度)(0.001)

地球より強い場合:惑星の大気にメタンとアンモニアが多く残ってしまい、生命にとってこれらの濃度が高すぎ、有害な環境となってしまう。

地球より弱い場合:惑星の大気から水分が多く脱出してしまう。

16 軌道の離心率(0.3)

地球の公転軌道の離心率の1.6%よりかなり高くなると、季節ごとの気温の変化が極端になりすぎる。

17 惑星の軸の傾斜角度(0.3)

理想的である23.5度よりかなり高くなる場合:惑星の大部分での夏と冬の気温差が高等生物にとって極端になりすぎる。

23.5度よりかなり低くなる場合:高等生物に適している気候を持つ範囲が極めて狭くなる。

18 惑星の自転周期(0.1)

24時間よりかなり長くなると、昼夜の温度差が大きくなりすぎる。 24時間よりかなり短くなると、風を引き起こす力が強くなるため、大気の風速が強くなりすぎる。

19 惑星の年齢(?)

若すぎる場合:原始生命以外の生物にとって、自転周期が早すぎる。

古すぎる場合:潮汐摩擦力によって自転周期が長くなりすぎる。

20 惑星の初期の歴史、またそれ以降のアストロイドや彗星との衝突率(0.1)

地球よりかなり頻繁な場合:生息地の破壊によって、多くの生物が絶滅してしまう。

地球よりかなり希な場合:生命が必要とする重元素が不足してしまう。つまり、生命を維持する惑星は最初のうちは外部からの物質を多く必要とし、後々 外部からの物質が少なくならなければならないということだ。

21 惑星の磁場(0.01)

強すぎる場合:激しい電磁嵐が起こり、強くなりすぎたヴァンアレン帯と共にそれは有害な放射線の源となる。

弱すぎる場合:地上生物は外部からの透過能の強い放射能から十分に守られなくなる。

22 惑星と月の重力の相互作用(0.1)

地球と月の間のものよりかなり大きい場合:海や大気、また自転周期に対する潮汐摩擦力の影響が大きくなりすぎる。

地球と月の間のものよりかなり小さい場合:地球の自転軸の傾斜角度の変動が気候の不安定性につながり、潮が弱くなるため海岸の水が停滞しがちにな り、栄養分がとぼしくなる。

23 地殻の厚さ(0.01)

地球よりかなり厚い場合:地殻の物質の酸化作用に酸素が使われすぎ、大気に入っていける酸素が少なくなりすぎる。地殻は、地球を覆う「錆」の層と考 えてもおかしくはない。このいわゆる「錆」に酸素が多く取られすぎると、CO2、H2Oや O2として大気に入っていける酸素が足りなくなるのだ。また同時に、地殻変動の活動が弱くなる。

地球よりかなり薄い場合:火山や地殻変動の活動が激しくなりすぎ、火山噴火と大地震が頻繁に起こり、高等生物がよく育たなくなる。

24 大気中の酸素量(0.01)

地球の21%よりかなり高い場合:有機物が燃えやすくなりすぎる(火事がすぐ起こり、消火もなかなかできなくなる)。

地球の21%よりかなり低い場合:高等生物が必要とする酸素が足りない。

25 大気中の酸素と窒素の比率(0.1)

窒素に対して酸素の比率が地球よりかなり高い場合:高等生物の生命化学の反応が速くなりすぎる。

窒素に対して酸素の比率が地球よりかなり低い場合:高等生物の生命化学の反応が遅くなりすぎる。

26 大気中の二酸化炭素の濃度(0.01)

地球よりかなり高い場合:悪循環的に暴走する温室効果となる。

地球よりかなり低い場合:植物による光合成の効率が下がる。

27 大気中の水蒸気の濃度(0.01)

地球よりかなり高い場合:悪循環的に暴走する温室効果となる。

地球よりかなり低い場合:雨量の減少によって、地上の高等生物がよく育たなくなる。

28 大気中の放電率(0.1)

地球よりかなり高い場合:火事による破壊が多くなりすぎる。

地球よりかなり低い場合:大気中の窒素が十分に土に返されない状態になる。

29 高層大気のオゾンの濃度(0.01)

地球よりかなり高い場合:地上の気温の低下により、高等生物の生活できる範囲が制限される。

地球よりかなり低い場合:地上の気温が上昇し、それ以上に紫外線が強くなり、地上の生物に害を及ぼす。

30 土壌の鉱化率(0.1)

土に含まれている栄養分が乏しすぎても、また肥えすぎても、生命の種類や複雑性は制限されてしまう。

31 地震活動(0.1)

強すぎる場合:高等生物にとってかなり破滅的だ。

弱すぎる場合:河川流出によって海底に堆積された栄養分が、地殻変動による上昇を通じて大陸にリサイクルされるのに不十分となる。

32 海と大陸の比率(0.2)

海と陸の比率が地球の場合の3対1とかなり異なると、生命の多様性と複雑性はかなり制限される。

生命を維持できる惑星が存在する可能性

宇宙に生命維持のできるほかの惑星が存在している可能性を計算するには、さらに最低でも二つの要素を考慮に入れなければならない。まず、上記の要素の多くが相互的な関係を持っていること。つまり、個々の確率を掛けるだけでは、最終的に出される数字が低すぎてしまうのだ。このため、「依存ファクター」を取り入れる必要がある。

しかし、この「依存ファクター」は、少なくとも部分的に「長続きファクター」によって取り消される。この「長続きファクター」とは、全ての要素が長期的に続いていける範囲内になければならないために計算に取り入れる必要があるものだ。地球の場合、38億年以内という範囲になる。

これらの要素は実際どれくらい大きいのだろうか。ヒュー・ロス博士は、「依存ファクター」を109、「長続きファクター」 を0.0001と推測している。これらの要素を全て取り入れると、上記の32の要素がひとつの惑星で起こる確率は1042分の 1(あるいは10-42)という極めて小さな数字となるのだ。惑星が生命を維持できるかどうかに関係のありそうな上記以外の要素 についても、現在研究が進められている。例えば、大気の透明度、気圧と気温の勾配、温室効果を引き起こす他の気体など、さらには木星のような惑星と地球 のような惑星が同じ惑星システムに存在する可能性など上記に含まれていないものもある。このことを考えると、実際の数値はさらに何桁も小さなものとなる だろう。たとえ、「依存ファクター」を百万倍大きくしたとしても、最終的な可能性は10'^-36'^までにしかならない。

宇宙に星は多くても約10'^23'^個しか存在していないことからしても、生命を維持できる惑星を一つでも見つけ出す可能性が極 めて低いことは明白だ(上記の確率によると、だいたい10'^-20'^になる)。もちろん、学者によっては上記の要素について異なる推 定や理論的根拠を使って異なる確率を導き出すだろうから、それらの確率のいくらかを議論する余地はある。ロス博士によると、上記の確率は楽観的なもので あり、そのため実際はこれらの数値の多くはさらに制限的なものである可能性が高い。同様に、我々が直接観測できる惑星は太陽系にある九つだけであること に対して、何兆もの恒星を観測し測定することができるので、恒星にまつわる要素のほうが確実であることも明記しておくべきだろう。

いずれにしても、宇宙そのものが生命に対して極めて苛酷なものであり、生命(特に高等生物)が存在するには非常に厳格で偶発的な状況が重ならなけ ればならないことは誰の目にも明らかだろう。そんなことが本当に偶然に起こることなど、一度でもありうるのだろうか。ましてや、何度も起こりうるだろう か。

我々が存在しているということは、当然のことながら少なくとも一度はそれが起きたということになる。それが自然法則のみによって起こったのか、超 自然的な存在によって引き起こされたのか、その質問には科学が直接答えることはできない。科学はこの問題には間接的にしか触れることができない。いろい ろな恒星や惑星に関する要素の複雑な相互関係や生命の発展などを調査したり、必要な要素が自然法則のみを通して、一度に全て揃う確率を推定したりするこ とはできる。科学ができるのはここまでだ。そこから先、つまり神聖な存在が直接世界の創造に関わったと信じることが理にかなっているか、あるいはその可 能性を排除し、偶然のまぐれで全てが存在するようになったと思うかは、一人一人が決めることなのだ。

地球外生命については確率の問題だといえる。現在、そして過去に宇宙のどこかの惑星に生命など存在していないと証明することはできない。関連する 数々の要素の理解を深めていくにつれ、どこかに地球と同じ環境を持つ惑星が存在する確率は低くなる一方であり、最近では一枚の宝くじ券を引くだけで宝く じの賞金を勝ち取る確率のほうが、宇宙の歴史の中で自然法則のみによって上記のすべての要素が一度に揃う確率よりも遥かに高いのだ。SETIに費やされ た莫大な資金は確かに多くの重要な知識に繋がったので、全てが無駄だったとは言えない。しかし、科学的、そして資金的現実を見る限り、天文学でもっと前 途有望な分野の研究を優先させるべきではないだろうか。

Updated: 2010 年 05 月 04 日,03:05 午前

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