ネアンデルタール人と現代人は異種交配が可能だったのか?

"Reasons To Believe"(信仰の根拠)が発行した"Connections" (2004年, vol.6, no.2) p.5)からの翻訳。

松崎英高(箱崎キリスト福音教会牧師)、ティモシー・ボイル(つくばクリスチャンセンター宣教師、物理学学士号、神学博士)共訳 ネアンデルタール人と現代人は異種交配が可能だったのか? ファザール・ラナ博士  

説得力のある証拠[1]があるにもかかわらず、少数の古人類学者たちと若干のクリスチャンはなおも、ネアンデルタール人は異種交配によって 現代人に遺伝的寄与をしたのだと信じています。もしネアンデルタール人が現代人と交配できるのなら、当然彼らは現代人であることになります。

ネアンデルタール人と現代人の異種交配の根拠とされるものは、身体構造という形態学的な証拠にまったく依存しています。現代人とネアンデルター ル人とが異種交配をしたという提案が初めてなされたのは、1999年のことでした。その年に、古人類学者の研究チームはポルトガルのラペド渓谷付近であ る化石を発見し、2万4,500年前と年代測定していたのでした。研究者たちは埋葬地から幼いオスの完全な遺体を発見したのです[2]。その時に、これらの古人類学者たちは“ラガル・ヴェルホ・チャイルド”と名付けたこの遺体の解剖学的構造を、現代 人とネアンデルタール人の特徴が混じっていると解釈したのです。このことから、彼らは現代人とネアンデルタール人は互いに緊密な関係にあり、常に交流し て交配したのだと結論したのです[3]。  

2003年に、同じ古人類学者たちのチームが別の現代人とネアンデルタール人の混血を発見したと主張しました。ルーマニアで発見されたこの標本 は一個の下顎であり、約34,000年前から36,000年前と年代測定されました。その時代には、ヨーロッパでは現代人とネアンデルタール人が共存し ていたと考えられています。これらの研究者たちはまたも、その顎と歯の解剖学的構造を古代の現代人とネアンデルタール人の特徴が混じっていると解釈しま した[4]。  

ほとんどの古人類学者は、ラガル・ヴェルホ・チャイルドとルーマニアの発見物を現代人とネアンデルタール人の混血と解釈することに異論を唱えま す。ポルトガルでの発見を批評して、イアン・タテルサルとジェフリー・シュワルツは「…ラガル・ヴェルホ・チャイルドの遺体の分析は大胆で創意に富んだ 解釈であり、大多数の古人類学者は証明されたものとは考えそうもない。」[5]と述べています。ほとんどの研究者は、ラガル・ヴェルホ・チャイルドは単に異常にずんぐりした現代人の子供である か、成長異常を伴う個体であり、ルーマニアでの発見は異常な特徴を持つ現代人の顎骨であると考えています。  

マックス・プランク研究所が行った新たな研究で、ネアンデルタール人と現代人が異種交配しなかった直接的な証拠が見つかりました[6]。この研究では、4体のネアンデルタール人の遺体と5体の現代人の化石から抽出されたミトコンドリアDNAを比較し たのです。ネアンデルタール人と現代人の年代はすべて3万年前から4万年前と測定され、またすべて地理的に同じ地域で発見されたものです。ネアンデル タール人のものはネアンデルタール人タイプのDNAであることが分かりました。また、現代人のものはまさに現代人のDNAでした。統計的な分析に基づい て、ネアンデルタール人は早期の現代人にいかなる遺伝的な寄与もしていないとの結論が出されたのです。言い換えれば、ネアンデルタール人と現代人が異種 交配をしたという確実な証拠はないし、進化論的な繋がりをほのめかすものもないのです。

引用文献

原文の科学文献を参照するためには、以下の文献を参照してください。

1 Fazale R. Rana, “DNA Study Cuts Link with the Past,” Connections Vol. 2, No. 3 (2000), 3; Fazale R. Rana, “Neanderthal-To-Human Link Severed,” Connections Vol. 5, No. 2 (2003), 8-9.

2 Constance Holden, “Ancient Child Burial Uncovered in Portugal,” Science 283 (1999), 169.

3 B. Bower, “Fossil May Expose Humanity’s Hybrid Roots,” Science News 155 (1999), 295; Cidallia Duarte et al., “The Early Upper Paleolithic Human Skeleton from the Abrigo do Lagar Velho (Portugal) and Modern Human Emergence in Iberia,” The Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 96 (1999): 7604-09.

4 Erik Trinkaus et al., “An Early Modern Human from Pestera cu Oase, Romania,” The Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 100 (2003): 11231-36.

5 Ian Tattersall and Jeffrey H. Schwartz, “Hominids and Hybrids: The Place of Neanderthals in Human Evolution,” The Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 96 (1999): 7117-19.

6 David Serre et al., “No Evidence of Neanderthal mtDNA Contribution to Early Modern Humans,” PLOS Biology2 (2004): 0313-17.

Updated: 2007 年 08 月 20 日,06:34 午後

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