唯一の創造主を支持する収斂


唯一の創造主を支持する収斂

翻訳 松崎 英高、ティモシー・ボイル

 生物の収斂は、反復可能な進化と呼ばれる現象と密接な関連があります。収斂とは、互いに近縁でない生物がほとんど同じ解剖学的、および生理学的特徴を持つという、自然界に広範に見られる傾向のことです[1]。鳥とコウモリの翼は、収斂の教科書的な事例です。鳥は鳥綱に属し、コウモリは哺乳綱に属しているので、両者は近縁でない生物です。鳥とコウモリの翼の構造は、表面的には類似していますが、根本的に異なっています。構造上の根本的な差異があまり明白でない、もう一つのよく知られた収斂の例は、現生種の胎生のオオカミと絶滅種のフクロオオカミとの著しい解剖学的な類似性です[2]。

 創造論や進化論のパラダイムによって、収斂の説明が試みられています。創造論者は収斂を、近縁でない生物が生存のために直面している一連の共通の壁に対処するために、一連の共通の解決法を採用された唯一の創造主の知的な活動と見なすのです。進化論者の主張は、収斂とは近縁でない生物がほとんど同一の自然選択力(環境、生存競争、捕食関係)に直面した結果であるということです。それ故に、自然選択は、ランダムな遺伝的な変異に道を開いて、近縁でない生物に類似した特徴を与える類似した経路に沿って進化的な変化を引き起こすと信じられているのです[3]。

 創造論と進化論の枠組みはともに、生物学上の収斂を説明しようとするので、自然におけるこの特性の解析によって、これらの二つのパラダイムを評価することができます。厳しい評価によって、進化論的なパラダイムは、生物学上の収斂におけるすべての側面を説明するのにとても不十分であることが明らかとなるのです。反対に、唯一の創造者を必要とする起源に関するモデルによって、収斂は容易に説明されるのです。

 進化論的なパラダイムにとって収斂が提起する難問とは、生命史の全般にわたって収斂が起こっている頻度です。収斂は、よく起こる共通した生命の特性なのです。この共通性は、進化論の原理によっては予測することができません。進化が本当に生命の多様性の要因であるのなら、収斂は極端にまれに起こっているはずです。進化のプロセスを導くメカニズムは、次々に起こる膨大な数の予測不可能な偶然の出来事から構成されます。このようなメカニズムや生物系に見られる複雑さや微調整を考えると、全く異なる進化の経路が同一の生物学的な特性に導いたなどとはありそうもないことに思えます[4]。

 収斂として最近認識されるようになった、複雑な生物学的な特性の二つの著しい事例があります。一つの事例は、コウモリのエコローケーション(自らが発した音の反響を知覚することによって、その生物の位置を判断する能力)であり、二つ目の事例は、オウムやスズメ亜目(訳注:ツグミ、ウグイス、ヒバリなど)やハチドリの前脳の構造です。進化論的な観点からは、小翼手亜目(コウモリ亜目)と大翼手亜目(オオコウモリ亜目)という二つの別のグループにおいて、コウモリのエコロ-ケーションが独立して進化する必要があったという、以前なされた二つの研究結果が、最近行われたDNAの塩基配列の解析によって確認されました[5-7]。また、以前行われた解析に加えて、この研究が示唆するのは、進化論的な観点から解釈すると、飛行のために使用される、コウモリとヒヨケザルの著しく類似した前肢の構造も、独立して進化したことになるのです。

 別の最近の研究は、脳の組織の遺伝子発現における行動の差異を利用して、ハチドリとスズメ亜目とオウムにおける、音声学習(本能よりも模倣によって音声を“学習する”能力)に起因する脳の構造が本質的に同一であることを証明しました[8-9]。これらの三種の鳥は互いに近縁ではないので、このことは驚くべきことです。すなわち、これら三つのグループに属する鳥の前脳において、音声学習に関与する七つの異なる構造が収斂しているのです。進化論的な観点から、これらの構造は三つの別個の時期に独立して進化したことになるのです。

  自然主義的な先入観をもってしても、コウモリのエコローケーションやコウモリとキツネザルの飛行や鳥の音声学習に関与する複雑な構造が、まったくランダムな出来事によって出現したということは、受け入れがたいことです。しかし、唯一の創造者がコウモリ、キツネザル、オウム、スズメ亜目、ハチドリの創造に関与されたのなら、これまで述べた著しい収斂は、予期されるものなのです。

進化論者にとってさらに大きな障害は、収斂が根本的に異なる環境に棲む生物において起こっているということです。これらの環境に左右されて、自然選択を構成する力が異なるのは当然のことです。このタイプの収斂の古典的な例は、頭足類(オウムガイ、甲イカ、イカ、タコ)の目の構造です[10]。頭足類と脊椎動物において目が類似していることは、次のことを考えると注目すべきことです。(1)頭足類を含む軟体動物は、脊椎動物(新口動物)とは根本的に異なるグループ(冠輪動物/ロフォトロコゾア) に分類されます[11]。(2)頭足類と脊椎動物では、目を形成する自然選択力はかなり異なっていたはずです。進化論では、頭足類のためには水中環境が、脊椎動物のためには原初の陸上環境が必要であったことでしょう。

水中環境と陸上環境でのさらに著しい収斂の例は、イカナゴ(魚類)とカメレオン(爬虫類)に見られます。最近の研究によって、これら二つの生物の視覚系と行動における尋常でない類似が分かってきました[12-15]。カメレオンとイカナゴは、ともに両目を同じ向きにではなく、別個にチョコチョコと動かします。一方の目を動かしながら、別の目を静止させることもします。さらに、両方とも、対象に焦点を合わせるために角膜を利用します。他の全ての魚類と爬虫類は、網膜に写る対象の映像の焦点を合わせるためにレンズを利用しますが、カメレオンとイカナゴはともに、角膜で焦点を合わせるために、特殊な筋肉(角膜筋)を利用します。カメレオンは距離感覚を片目で判断します。科学者は、イナカゴもこの方法で奥行知覚を測っていると考えています。また、イカナゴとカメレオンには両方とも、捕食動物や餌動物に簡単に発見されないように、目をおおう皮膚の皮膜があります。両方とも、捕食行動は同じです。餌動物を攻撃する時、カメレオンの舌が描く軌道は、イカナゴが餌に飛び掛る時の軌道と同じです。(イナカゴは、砂床に潜って両目を砂から出し、小さな甲殻類が通り過ぎるのを待ちます。)

この収斂を最初に発見した研究チームの一つは、こう言わざるを得なかったのです。「このように見事な協調的な光学システムを目の当たりにする時に、多様な微調整されたメカニズムの収斂があまりにも多いことを説明するのは、難しいのです。」[16]

これまでの事例は、進化論的なパラダイムにとって、収斂に伴う困難さを浮き彫りにします。知られている限り、進化論的なメカニズムによっては、生物学上の収斂という自然の特質を説明することができないのです。収斂は、生命史の全般にわたって、極めてありふれたもので、極めて複雑な構造を持ち、自然選択力が広範囲に異なる状況で起こってきたのです。地球史の全般にわたって、生命が創造主の超自然的なみわざの結果であるという主張においては、生物学上の収斂は重要な要素なのです。

引用文献

1. Monroe W. Strickberger, Evolution, 3d ed., (Sunberg, MA: Jones and Bartlett Publishers, 2000), 632; 637.

2. Mark Ridley, Evolution, 2d ed. (Cambridge, MA: Blackwell Science, 1996), 470-72.

3. Strickberger, 632; 637.

4. Kurt Wise, “The Origin of Life’s Major Groups,” in The Creation Hypothesis: Scientific Evidence for an Intelligent Designer, J.P. Moreland, ed. (Downers Grove, IL: InterVarsity Press, 1994), 212-15.

5. Emma C. Teeling et al., “Molecular Evidence Regarding the Origin of Echolocation and Flight in Bats,” Nature 403 (2000): 188-92.

6. Dorothy E. Pumo et al., “Complete Mitochondrial Genome of a Neotropical Fruit Bat, Artibues Jamaicensis, and a New Hypothesis of the Relationships of Bats to Other Eutherian Mammals,” Journal of Molecular Evolution 47 (1998): 709-17.

7. James M. Hutcheon et al., “Base Compositional Biases and the Bat Problem III. The Question of Microchiropteran Monophyly,” Philosophical Transaction of the Royal Society of London B 353 (1998): 607-17.

8. Erich D. Jarvis et al., “Behaviorally Driven Gene Expression Reveals Song Nuclei in Hummingbird Brain,” Nature 406 (2000): 628-32.

9. Annette Heist, “Singing in the Brain,” Natural History, October (2000): 14-16.

10. Robert D. Barnes, Invertebrate Zoology, 3d ed., (Philadelphia, PA: W.B. Sanders Company, 1974), 424-27.

11. Anna Marie A. Aquinaldo and James A. Lake, “Evolution of Multicellular Animals,” American Zoologist 38 (1998): 878-87.

12. Mandyam V. Srinivasan, “When One Eye Is Better Than Two,” Nature 399 (1999): 305-07.

13. J.D. Pettigrew and S.P. Collin, “Terrestrial Optics in an Aquatic Eye: The Sandlance, Limnichthytes fasciatus (Creediidae, Teleostei),” Journal of Comparative Physiology A 177 (1995): 397-408.

14. John D. Pettigrew et al., “Convergence of Specialised Behavior, Eye Movements and Visual Optics in the Sandlance (Teleostei) and Chameleon (Reptilia),” Current Biology 9 (1999): R286-88.

15. Kerstin A. Fritsches and Justin Marshall, “A New Category of Eye Movements in a Small Fish,” Current Biology 9 (1999): R272-73.

16. Pettigrew and Collin, 407.

Updated: 2008 年 01 月 04 日,01:58 午前

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