脊索動物の化石は理論を覆す

"Reasons To Believe"(信仰の根拠)のホームページ (Chordate Fossils Foil Theory) からの翻訳。

松崎英高(箱崎キリスト福音教会牧師、薬学博士)、ティモシー・ボイル(つくばクリスチャンセンター宣教師、物理学学士号、神学博士)共訳

【Author】Fazale R. Rana

【Title】Chordate Fossils Foil Theory

【Literature】Facts for Faith, new articles

中国における化石の豊富な宝庫は、複雑な生命が地球史において最初に出現した時代を垣間見る窓を、古生物学者たちに提供してくれます。科学者たち がこの窓を覗き込むと、自然主義的な説明を不可能にするような光景を目にするのです。

中国で発見された化石は、ブリティッシュ・コロンビア(訳注①)などで発見されたものもそうですが、予期していなかった光景を見せてくれます。す なわち、地球史においてこれまで存在したほとんどすべての動物の門が、約5億4,000万年前に突然出現したのです[1]。門とは、生物のボディプラン(訳注②)、あるいは形態的な構造を描写する生物学的分類上のレベルを意味します。あ る古生物学者たちは、70以上の動物(厳密に言えば海洋動物)の門が、200~300万年以下の期間内に出現したと報告しています。科学者たちは、動物 の門の劇的な出現をカンブリア紀の大爆発、あるいは生物学の"ビッグバン"と呼ぶのです。

古生物学者たちは、カンブリア紀の大爆発と関連があるのは無脊椎動物(背骨を持たない生物)のみであると考えてきました。しかし、中国においてカ ンブリア紀の初期の堆積物から最近発見された無顎類(訳注③)は、彼らの見解を変えました。今や研究者たちは、無脊椎動物と脊椎動物が同時期に出現した ことを説明しなければならないのです[2]

脊索動物門は、動物の起源について研究している古生物学者たちが特別な関心を寄せている分野です。脊索動物には、すべての脊椎動物(魚類、両生 類、爬虫類、鳥類、哺乳類)と何種類かの無脊椎動物(訳注④)が含まれます。ですから、脊索動物の起源を理解することは、地球史上最も重要な生物の起源 を理解することになるのです。この理由のゆえに、進化論的な生物学者たちは、この時代の窓を垣間見ることに熱心なのです。彼らは特に、脊索動物門と他の 無脊椎動物の門との繋がりを見たいと願っています。

最も広く受け入れられている進化論的なモデルによれば、棘皮動物(ヒトデやナマコなど)が脊索動物に進化しました。また、棘皮動物は進化の側枝と して半索動物(訳注⑤)にも進化しました[3]。このモデルは、海底に付着する棘皮動物が付着性の脊索動物(尾索動物に分類される)に進化したことを仮定していま す。尾索動物とは、現代の被嚢類の動物(幼生の時には自由遊泳性で、成虫では付着性の無脊椎動物)に似ています(訳注⑥)。さらに、この尾索動物が自由 遊泳性の頭索動物(訳注⑦)に進化し、次には無顎類に進化し、有顎類(下顎のある魚類)と続きました。

脊索動物の起源を説明する進化論的なモデルによって化石の記録を予測すれば、その出現する順番は棘皮動物、尾索動物、半索動物、頭索動物、無顎 類、有顎類となります。これらのグループの間には広範囲に及ぶ違いがあることを考慮すると、化石記録においてそれぞれのグループが最初に出現する年代 は、カンブリア紀の大爆発によって示された200~300万年よりも遥かに長い期間によって隔てられているはずです。

ところが、中国での発見は、カンブリア紀の最も早い時期に棘皮動物と半索動物と頭索動物と無顎類が共存していたことを示しています[4]。さらに、中国の古生物学者たちは、カンブリア紀初期の岩石で被嚢類(訳注:ホヤ類)を発見したことに伴い、尾索動 物をリストに加えました[5]。カンブリア紀以前には、このような動物は地球上には存在しませんでした。言い換えれば、複雑な動物が最初に現れた カンブリア紀の初期に、進化論によれば後に有顎類に進化するはずである動物種が同時に出現したのです。

この問題をさらに複雑にしたのは、中国の古生物学者たちがカンブリア紀の大爆発にウェツリコリア(Vetulicolia)というもう一つの門が 存在したと認識したことです[6]。この分類群の特徴は、脊索動物の進化系統樹の根元にウェツリコリアを置くことです。このことは、カンブリア紀の大 爆発をさらに劇的なものとします。中国人科学者たちの言葉を借りれば、「系統樹の根幹にある新口動物(訳注⑧)、すなわち、ウェツリコリアと無顎類の同 時出現は、原生代後期の末期やカンブリア紀初期における後生動物(訳注⑨)のボディプランの"爆発的な出現"と調和しています。」[7]

化石の記録という時間の窓を通して入ってくる光景がますます鮮明になる度に研究者たちが目にするのは、棘皮動物、半索動物、尾索動物、頭索動物、 それに無顎類が突然に、そして同時に化石記録に出現することです。観察可能な資料に伴うこのようなイメージは、自然主義的に説明しようとすると困惑させ られますが、動物の複雑な生命が神によって組織的に地球上に導入されたと主張する聖書的な創造論モデルとは合致するのです。

訳注

①バーチェス頁岩

②生体の基本的設計

③下顎のない魚類。当然、脊椎動物。現存種は、吸盤状か裂状の口を持つヤツメウナギ類とメクラウナギ類のみ。無顎類の大半は、堅い外骨格で身を包 んだ甲冑魚(かっちゅうぎょ)という化石種で、古生代に繁栄して絶滅した。

④頭索動物と尾索動物

⑤口盲管(半索)という脊索に似た構造を持つ。現存するものとしては、ギボシムシ類とフカサツギ類。

⑥尾索動物亜門は、ホヤ類、タリア類、オタマボヤ類の3つのグループ(網)からなる。尾索動物亜門は、頭索動物亜門、脊椎動物亜門とともに脊索動 物門に属する。

⑦現存するものとしては、ナメクジウオの仲間のみ。

⑧新口動物(デウテロストミア)とは、棘皮動物や半索動物や脊索動物などからなり、発生時に胚胞に消化管ができる時に、胚胞の表面が陥入して最初 にできた穴(原口)が肛門になり、後にできる穴が口になる。原口が口になるものを旧口動物と言う。

⑨原生動物(単細胞動物)以外の動物の総称。原生動物に対して、後から出た動物を意味する。海綿動物が後生動物の中で最も原始的とされる。

引用文献

1 Fazale Rana and Hugh Ross, "The Cambrian 'Explosion' and Why It Means So Much for Christians," Facts for Faith2 (Q2 2000), 15-17.

2 D. -G. Shu et al., "Lower Cambrian Vertebrates from South China," Nature402 (1999): 42-46; Jun-Yung Chen et al., "An Early Cambrian Craniate-like Chordate," Nature402 (1999): 518-22.

3 Cleveland P. Hickman, Sr. et al., Integrated Principles of Zoology, 6th ed. (St. Louis, MO: The C. V. Mosby Company, 1979), 476-81.

4 Fazale R. Rana, "Cambrian Flash," Connections, vol. 2, no. 1 (2000), 3; Fazale "Fuz" Rana, "Extinct Shell Fish Speaks Today," Connections vol. 3, no. 2 (2001), 1-2.

5 D. -G. Shu et al., "An Early Cambrian Tunicate from China," Nature411 (2001): 472-3.

6 D. -G. Shu et al., "Primitive Deuterostomes from the Chengjiang Lagerstatte (Lower Cambrian, China)," Nature414 (2001): 419-24.

7 D. -G. Shu et al., "Primitive Deuterostomes," 419-24.

Updated: 2006 年 11 月 02 日,04:39 午後

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