エイリアンは別世界から来るのか?


アメリカ内外で、UFO(未確認飛行物体)とETI(地球外知的生命体)への妄想が広まりをみせ、それがキリスト教への大きな挑戦となりつつあります。UFOとETIのカルトの数が増えるに伴い、中には公然と宗教的になったり、純粋に科学的な活動を装ったりしながら、人類への救済のメッセージを広めています。それは、イエス・キリストの福音を直接的に否定したり、公然と攻撃したりしているのです。

これらのカルトは、超越的な創造者の存在を否定します。彼らは、救いがイエス・キリストの贖いの業に対する信仰を通してのみ与えられることを否定します。むしろ、彼らは、人類のあらゆる問題に対する解決法を載せた本を通して、進化したエイリアンの“ガイダンス”を受け入れることに希望があると宣伝します。あるカルトでは、その“ガイダンス”をウランティアと呼び、それはすでに出版されたと主張します。また、エンサイクロペディア・ギャラクティカ(銀河系百科辞典)と呼ぶものもあり、それが与えられるのを待っています。

アフリカ、オーストラリア、カナダ、日本、ロシア、ウクライナ、米国の大学や団体での講演会では、Reasons To Believeの関係者を含めてキリスト教弁証家が最も頻繁に受ける質問の中で、UFOやETIに関するものが多いのです。このような質問の多さは、世界中でのUFO目撃が1年に100万件を越えるという調査結果から当然とも言えるものです[1]。

天文学者は、UFO目撃情報の大多数が自然現象として説明できることを容易に確認できます。目撃されたUFOのほんのわずかなケースが、本当に自然現象や人間の仕業として合理的な説明ができないものです。しかし、目撃体験をした非専門家のほとんどは、そして科学者の一部でさえ、目撃直後の反応は、人間を超えた知性を持つエイリアンが遠い宇宙から高性能の宇宙船に乗ってやって来たのだというものです。“空飛ぶ円盤”と“UFO”は、世界の大多数の人々にとって同じ意味です。空飛ぶ円盤のクラブやカルト集団は、UFOとの遭遇を研究したり、地球がエイリアンによってずっと調査されてきたのだという主張を宣伝したりすることに専念しているのです。

地球以外に知的生命体が存在するかどうかという問題は一時保留にすることにして、惑星系間、あるいは銀河系間の旅行という発想はどれほどに現実的なのでしょうか。UFO現象を取り扱っているあらゆる本のうちのわずかしか、宇宙の特徴と宇宙旅行の物理学的な障害について十分な注意を払っていないのです。そのような障害は、アポロ13号や生物圏に関する実験を含む、過去数十年の人間の試みによって重視されるようになりました。

距離という障害

航空宇宙局(NASA)が地球の近隣の惑星に宇宙船を送ることに成功するのがほとんど当たり前のこととなった今日において、(銀河の至るところや銀河の外まで宇宙旅行をするというテレビや映画でよく見かける場面について語っているわけではないのですが、)人々は二つの事実を見落としがちなのです。(1)物理学の法則や定数は、知的生命体が遠距離の宇宙旅行をすることに厳しい制限を課します。(2)技術的な潜在力を結集しても(どんなに技術的な進歩があっても)そのような制限を克服できないのです。

銀河系間、あるいは惑星系間の旅行でさえ、星を隔てる膨大な距離が障害となるのです。当然、距離は時間に換算され、時間はリスク・エクスプロージャ(危険に晒されること)に換算されます。生身の身体、あるいは機械仕掛けの身体でも長い時間を宇宙で過ごすほど、多くの致死的な危険に遭遇します。

もっとも近い星でも、4兆km離れています。直径が約160万kmの太陽をグレ-プフルーツの大きさで表わすなら、その距離はロサンジェルスからニカラグアのマナグアまで(東京からタイのバンコクまで)の距離に相当します。NASAで最速の宇宙船に乗せてもらってその星に行こうとするなら、11万2000年かかる計算となります。

しかし、その最も近隣の星は生命を維持するための基本的な必要条件を満たしていないのです。感覚を持つ肉体的な存在は、地球のような居住環境、すなわち、太陽によく似た、年齢が寿命の半ばである単一星の恒星の周囲を公転している地球とよく似た惑星が必要なのです。この惑星の軌道は、ほとんど円形である必要があります。その上、その惑星は、木星のように大きな質量を持つ惑星によって小惑星の衝突から守られていなければなりませんが、そのように防護してくれる惑星の重力によって適切な公転軌道から弾き出されてはならないのです。もっとたくさんの条件を挙げることができますが、問題を理解するためには、これらで十分です[2]。地球から50光年以内にある星で、この必要条件を満たすものはありません。太陽と同じくらいの質量を持つ恒星は、若すぎるか古すぎるかのどちらかであり、十分に安定した燃え方ができないのです[3]。それらの星は伴星を持つか、地球型の惑星の軌道をかく乱させる巨大な惑星がその近隣にあります。あるいは、保護者となる大きな惑星がないのです[4]。

仮に知的生命体がほんの50光年の距離に住んでいるとしても、地球に到達するためには銀河内のいろいろな危険地帯を避けてジグザグコースを取らなければなりません。それは、旅を著しく引き伸ばすものになります。到着しようとする旅行者は、中性子星、超巨星、新星と超新星の爆発、さらにそのような爆発の残存物の重力や致死的な放射線を素早く回避しなければなりません。また、遅れて誕生した恒星、すなわち、過去50億年以内に誕生した恒星の周辺はもちろん、銀河の渦巻き腕の中にある高密度のガスやチリや彗星をも避けなければなりません。しかも、銀河の円盤の平面内を旅しなければなりません。その平面から少しでも離れるなら、銀河の中心核から流れている致死的な放射線に、旅行者は暴露されることでしょう。そのような危険地帯を避けて宇宙船を操縦すると、最短距離で50光年の旅程が75光年に引き伸ばされるでしょう。

しかし、最近の発見はその旅程の最低限の数字を引き上げることになりました。惑星間宇宙船が故郷の惑星、あるいは宇宙旅行団の他のメンバーとの通信を維持しているという仮定に基づいて、SETI(ETI探求)研究グループは、地球から155光年以内に存在する、私たちの太陽にほぼ類似している太陽型の恒星202個のすべてを細かく調べました。それぞれの恒星の周辺からは知性を示すたった一つのシグナルでさえ、どこにも探知されなかったのです[5]。この調査は、エイリアンの最短旅程距離の155光年に危険地帯を回避するための操作を加味して、おおよそ230光年、あるいは2180兆kmにわたるものです。

速度という障害

高校の理科の授業を思い出す読者もおられることでしょうが、物理法則はいかなる物体でも光速より速く移動することを許さないのです。しかし、物体がその速度に到達するはるか以前に、深刻な困難が生じます。特定の質量を光速で移動させるには、無限のエネルギーを必要とします。物体を光速の半分の速度で進ませるためでさえ、NASAの最速の宇宙船が必要とするエネルギーの数百万倍が必要です。

しかし、燃料とエンジンの質量の故に、エネルギーの問題はますます深刻になります。宇宙船の速度を速くするほど、より多量の燃料とより大きなエンジンが必要です。それゆえに、宇宙船により速いスピードを求めるほど、船の質量は指数関数的に大きくなります。

宇宙船の積載質量(乗客、乗組員、機材、生命維持装置の総重量)を運ぶ必要から、質量の問題はさらに深刻になります。宇宙船と推進システムの質量の合計は、積載質量と等比級数的な関係にあります。

さらに、より大きな速度を要求すると、別の問題が持ち上がります。すなわち、物体がより高速で宇宙を移動するほど、宇宙空間の残骸による損傷を受ける確率がより大きくなります。実例を挙げると、微小隕石がハッブル宇宙望遠鏡のソーラーパネルに4センチほどの穴を開けたことがあります。ハッブル宇宙望遠鏡は微小隕石に対して光速の0.04%、地球に対して光速の0.003%で移動していました。もし、その宇宙望遠鏡が微小隕石に対して1000倍の相対速度で移動していたなら、損傷は100万倍も大きなものであったことでしょう。(損傷の増大は、移動速度の増加の平方倍となります。)

宇宙の残骸に関して言えば、微小隕石は宇宙旅行者にとって最も小さな問題であることでしょう。1000億個以上を含むと見積もられている彗星の巨大な雲が、太陽系を取り囲んでいます。そのような雲は、銀河内の惑星を持つどの恒星の周囲にも存在することが大いにありうるのです。天文学者たちは、天の川銀河の至るところに巨大な分子の雲が散らばっており、その中にはより多数の彗星が含まれているのではないかと、考えています。

宇宙の残骸による損傷から保護するために宇宙船はある種の装甲が必要です。しかし、装甲を施すとさらに質量が増し、そのことは増えた質量の分だけの燃料を余計に必要とすることを意味します。燃料を増やすことは、その増えた分の燃料を運搬するためにさらに燃料を必要とします。このようにして、問題はエスカレートします。

速度を落とせば、宇宙の残骸によるリスクは減少しますが、時間が余計にかかってしまいます。宇宙の残骸による損傷の確率は、宇宙旅行に費やされる時間の長さに比例して大きくなります。そして、損傷の規模は速度の2乗に比例して大きくなります。それゆえに、残骸による損傷に関して言えば、宇宙旅行者は、どんな速度においても、すなわち遅くても速くても、死の危険に直面します。さらに、宇宙船は移動速度が遅くても速くても、その各部品に通常の磨耗と断裂が生じるでしょう。

放射線による被曝は、もう一つの深刻な脅威です。宇宙船が宇宙空間をより速く進行すれば、放射線による損傷もそれだけ大きくなります。放射に伴う粒子(陽子、中性子、電子、重原子の原子核、フォトン)は、船の表面と部品に侵食を引き起こします。侵食の程度もまた、船の速度の2乗に比例します。しかし、速度を遅くすれば、宇宙での滞在時間が延長され、船上のエイリアンはその余分な時間だけの放射線被曝を被ることになります。実際的な防護壁がどんなものであろうとも、またどんなに分厚いものであろうと、多少の放射線が通過するのは必然的です。  かなり控えめに考えても、知的生命体は光速の約1%を超える速度では移動できません。それ以上の速度では、放射線、宇宙の残骸、エア漏れ、磨耗と断裂によるリスクが大き過ぎて、目的地に到着する前に宇宙の旅行者が死滅するのを防ぐことができません。光速の1%(時速約1120万km)で進んでいる宇宙船は、75光年進むのに7500年かかり、230光年進むのに2万3000年かかります。

ワームホールの抜け穴はどうか?

豊かな想像力を持つ、専門的に教育されたUFOやETIマニアは、高度に進化したエイリアンが比較的短時間で宇宙内の遠距離を移動するために、時空の“ワームホール”を使用する方法を見つけたのかも知れないと提案しました。しかし、より周到な調査で分かることは、このアイデアは距離と時間という障害を解決するのに、何の助けにもならないということです。

相対性理論によると、質量を持つ物体はその周囲の時空の曲率を歪めてしまいます。物体の質量密度が大きくなるほど、その近傍で時空の湾曲率がより大きくなります。一般相対性理論が予測するのは、ブラックホールのように、物体がそれ自体の重力によって十分に圧縮される時、時空の個々の領域は曲率が無限に大きくなるところまで発展します。すなわち、質量密度と空間の曲率が無限大になる領域である特異点が、質量濃度の中心で成長するのです。

仮定の話ですが、宇宙の時空のある面と接続しているブラックホールが時空の別の面と接続しているもう一つのブラックホールとたまたま接触することがあれば、この接触している点が移動ルートになるかも知れません。しかし、この接触点は、一つのブラックホールの中心に向かって進んでいる旅行者がもう一つのブラックホールの中心に接触できるような、特異点と特異点を連結したものです。  一つのブラックホールともう一つのブラックホールを結ぶ、これらのいわゆるワームホールは数学的には可能ですが、口先だけの理屈を述べるのではなく、エイリアンの旅行者が使用する上で物理学的に実用性があるかどうかが問われるべきなのです。最良の宇宙論のモデルによれば、ワームホールによって連結する可能性のある空間の領域は、距離的にあまり離れていないのです。言い換えれば、ワームホールの使用には、わずかな時間の短縮しかないということです。10次元の時空を持つ宇宙モデルによると、U字形のように湾曲した時空の中では、宇宙空間に有意な近道ができる可能性がありますが、そのようなモデルの実用性が未だに証明されていません。

社会的面の考察

エイリアンの星から地球までの片道にかかる最短時間である7500年間で、疑いもなくエイリアンは、気力を失わせられるような社会的な難問に直面することでしょう。物理学の法則に従えば、宇宙の領域内のどこにおいても寿命は無限ではなく、有限でなければなりません。さらに、宇宙旅行が引き起こす放射線被曝に伴い、寿命は必ず短くなります。物理的な耐用年数を化学的に求めただけのことですが、炭素を基本骨格に持つ生化学の複雑さは、エイリアンが長期間に及ぶ冬眠をするとしても、その寿命を約1000年にします。(生命体の唯一の生化学的基本骨格ですが)[6,7]

75光年以上の宇宙の旅は、幾多の世代にまで及びます。幾多の世代にもわたる宇宙旅行では、さらに一連の困難さが生じます。最初の旅行者がそのミッションに志願したかどうかに関わりなく、彼らの子孫は、自らの選択によってではなく、世襲によってそのミッションを引き継ぐことになるでしょう。その如何を問わず、そのミッションは子孫に引き継がれます。宇宙旅行者が多少なりとも人間に似ているとすれば、最初の目標に専念することを貫き通すことが難しいことは、容易に想像できます。他の困難さがある上に、優先事項の変更や混乱がその旅行期間に起こることはありそうなことです。それらのことは、その旅を中止させることさえあるかも知れません。

多世代にわたる宇宙旅行を行なう計画を立てる場合、最初の乗客になる基礎集団が十分に大きく、かつ多様性を持つ必要があります。そうでなければ、宇宙船が意図した目的地に着く前に、恐らくエイリアンは絶滅することでしょう。それに、2から20,000までのどの成員数でも、生命維持のためにいろいろな資源やシステムが必要です。これらの資源とシステムには、最低でも食物と呼吸装置と消耗品のリサイクルが含まれていて、生態学的災害のリスクを最小限にするために、すべてが十分なレベルで維持されていなければなりません。

サバイバルのための諸問題

片道で7,500年以上掛かる宇宙旅行には、エイリアンの旅行者の生存に関して深刻な懸念があります。成員数の制限と宇宙旅行でのあらゆる偶発事故を考えると、死滅するリスクが圧倒的に多いように思えます。人類が過去50年間で発見したことですが、宇宙旅行ができるほどに発達した文明は、宇宙旅行を実現する宇宙船を作らないうちに死滅してしまう可能性があります。ハイテクの代償は大きなものです。即ち、生存率の減少がもたらされるのです。

ハイテクとその結果としてもたらされる生存率の上昇は、一般的に有害な突然変異を持つ個体が長く生き残って、生殖することを意味します。ハイテクと高い生存率は、男女の生殖の時期を遅らせるように強く働きかけます。ハイテク世界においては、それぞれが自立するため、また科学技術の継続的な発展に貢献するために、教育や訓練により多くの時間が必要です。

生殖が遅れることは、特に男性にとって、増加した有害な突然変異(遺伝子の欠陥という意味ですが)を次の世代に受け継がせることになります[8]。ある研究によると、20世紀末において、全人類は一人当たり1世代につき3個の有害な突然変異を蓄積してきました[9]。この速度は、人類を著しい速さで絶滅に向かわせます。

さらに悪いことに、富と科学技術は出生率と逆相関します。社会全体が豊かになるほど、また科学技術の使用が拡大するほど、その子孫の誕生は少なくなります。今日では、一人当たり220万円を超える収入を持つ国民の出生率は、例外なく最終的な絶滅を防げるほどに十分高くはないのです。例えば、ヨーロッパや日本の出生率は、人口を一定に保つに必要なレベルの75%以下です[10]。

宇宙旅行者にとって、これらすべての問題はその旅行団の成員数に課せられる制限によって悪化します。大きな惑星に住む60億の人々は、伝染病や自然災害や生態学的な危機や戦争に耐えることができますが、宇宙船や宇宙船団に乗っている数人から数千の規模の乗員数では、おそらくそのような悲劇的結末によって絶滅することでしょう。さらに、人類にはその大きな居住環境に、遭遇した問題や災害から一時的な逃げ道となる多岐にわたる避難所を持っているという有利さもあります。

これまで述べてきた絶滅の危機は、宇宙旅行を実現するほど十分な科学技術があっても、遠方の星や惑星からの宇宙旅行者が地球に到達するよりも、決定的に絶滅することの方がずっとあり得ることを示唆するのです。こういうわけで、エイリアンにとっての唯一の合理的結論は、自分の惑星にとどまるか、せいぜい植民政策を同じ惑星系に制限することです。

科学技術の問題

宇宙の残骸、放射線、エア漏れ、生態学的な破壊、磨耗や破断による損傷の問題は、機械装置よりも宇宙船に乗り込んでいる知的生命体の方がかなり深刻です。知識を収集したり、与えたりすることが目的の宇宙旅行であるなら、通常人間は機械装置よりも敏速にかつ首尾よく、環境の変化や予期せぬ偶発事故に対応して適合できるという有利さを持っています。しかし、宇宙旅行の距離が増すと、その有利さは逆転します。すなわち、機械装置と比較して、人間を移送する困難さが増大するにつれ、人間の順応性はより低下します。

私たちの太陽系を探検するためでさえ、機械装置には非常に大きな有利さがあります。地球から0.0001光年離れている木星の衛星に向けた有人ミッション飛行のコストで、少なくとも1万回の無人探索飛行ができます。このようなミッションにおいて一つの装置に何か故障が起こったとしても、誰かが任務を遂行できなくなるかも知れませんが、誰も死ぬことはありません。ある装置で徹底的に調査できない何かが探知されたなら、別の装置が設計されて打ち上げられます。ほとんどの場合では、そこにもっと長く滞在すべき状況になれば、わずかの再設計と設備の付加的な供給によってミッションは達成されます。1ヶ月間のミッションに付いた数名の乗員が調査目標である惑星や月について得る知識よりも、一万回の無人探索飛行が何年も探索を継続することの方が遥かに多くの情報が得られるでしょう。

この種の分析は、人類よりも高等なエイリアンにも当てはまることでしょう。もし、遠距離の惑星系に存在するエイリアンが地球に関心を持っているのなら、エイリアンの中から派遣するよりも、機械装置を送り出すことの方がありそうなことなのです。

さらなる研究の必要性

遠距離の宇宙旅行の実現可能性に関するこの簡単な分析は、重要な要素のすべてを取り上げたものではないかも知れません。さらに、時間が経てば、分析で使用した計算値や見積もりが楽観的過ぎるのか、それとも悲観的過ぎるのかが分かるようになるでしょう。しかし、図書館でわずかの時間でも電卓を利用すれば、UFOやETIに関する疑問について多少なりとも現実的に考察できることが必ず分かります。納税者が支払った税金から高額な費用を支出して、エイリアンからの信号や宇宙船を探るよりも、この比較的費用のかからない研究に使われる方がより賢明なことでしょう。

組織的に遠距離の惑星の特徴を発見したり、探査したりするために企画された計画は、とても有用なものでしょう。天文学者たちは、太陽系の外に60を超える惑星の質量や軌道を割り出しました[11]。さらに、NASAでは、一組の望遠鏡を宇宙に打ち上げるための財政的支援が見込まれています。それらの望遠鏡は、遠距離にある地球サイズの惑星の質量と軌道を計測するだけでなく、自転速度や大気の組成をも測定する能力を持つことになっています[12]。  

動機を考察しましょう

UFOやETIに対する人の心をつかんで離さない関心は、科学的なものにではなく、心霊的なものに深く根差しているようです。生命の起源の研究者たちは今や、地球、火星、いかなる恒星系、あるいは彗星や星間雲のどこででも、生命の起源を自然のプロセスで説明するのが事実上不可能であることを認識しています[13]。恒星からの放射圧は微生物を必ず殺してしまうので、微生物が星間の宇宙空間を移送されないという発見が重なり、この可能性が排除されるのです[14]。

この皮肉な成り行きは無視するにはあまりにも大き過ぎるように思えます。明らかに心霊的な探求であることが分かっていることに、政府や民間の基金から膨大な研究費が当てられています。そのような探求がキリスト教の教理を支持するのではなく、敵対する限り、“教会と国家からの離反陣営”から猛烈な抗議があがることはありません。しかし、もっと皮肉なことに、来世や現世において、最良の人生を可能にするために必要な情報と指導のすべてを、人類がすでにその手に握っているということです。この“特別宇宙百科事典”(訳注:聖書のこと)は、神の霊によって人類に届けられ、明確な証拠によって裏付けられました。人類が確かにそれを理解して受け入れるために、2000年前に創造者ご自身がエイリアンの姿ではなく、人間の姿をとって個人的にこの惑星に訪れてくれました。そして、創造者は、ご自分で人生の最も大切な疑問と課題に回答を与える情報源を啓示されたのです。

引用文献

1. Jacques Vallee, Dimensions (New York: Ballantine, 1988), 230-31. 2. Hugh Ross, The Creator and the Cosmos, 3d ed. (Colorado Springs: NavPress, 2001), 176-87. 3. NASA catalog of the 2613 known stars within 81 light-years of Earth, Web site address: http://nstars.arc.nasa.gov/. 4. Jean Schneider, Extra-solar Planets Catalog, a frequently updated Web site catalog at http://www.obspm.fr/encycl/catalog.html. 5. Christopher F. Chyba, “Life Beyond Mars,” Nature 382 (1996), 577. 6. Robert Dicke, “Dirac’s Cosmology and Mach’s Principle,” Nature 192 (1961), 440. 7. Ross, Creator, 178. 8. James F. Crow, “The Odds of Losing at Genetic Roulette,” Nature 397 (1999), 293-94. 9. Adam Eyre-Walker and Peter D. Keightley, “High Genomic Deleterious Mutation Rates in Hominids,” Nature 397 (1999), 344-47. 10. John W. Wright, ed. The New York Times 2000 Almanac (New York: Penguin Reference, 1999), 487. 11. Schneider. 12. Bijan Nemati, “The Search for Life on Other Planets,” Facts for Faith 4 (Q4 2000), 22-31. 13. Fazale Rana and Hugh Ross, “Life from the Heavens? Not This Way . . .” Facts for Faith 1 (Q1 2000), 11-15. 14. Paul Parsons, “Dusting Off Panspermia,” Nature 383(1996), 221-22.

ブラックホール、特異点、ワームホールの解説

ヒュー・ロス

SF的な発想から離れて現実的な観点に立てば、ワームホールは、純粋に学問的な問題です。ブラックホールは比較的にまれなので、遠距離にある二つのブラックホ-ルの特異点が接触する確率は実質的にはほとんどゼロです。それは、エイリアンの宇宙旅行に使用できる位置にワームホールが存在する確率にも同じことが言えます。さらに、一般相対性理論によると、ワームホールは極めて不安定です。存在する可能性のあるどのようなワームホールでも、その寿命は1秒にも遥かにとどかないほどに極めて短いため、生命体はもちろん、基本素粒子でさえ通過することができないのです。

ワームホールを利用した宇宙旅行の可能性を徹底的に否定する証拠は、物理学的法則です。手短に言えば、どんな物体でも、ワームホールの近傍にある強力な重力によって原型をとどめないほどに破壊されるでしょう。それに近づく不運なエイリアンは、数kmに及ぶ素粒子の長い線にまで引き伸ばされることでしょう。このエイリアンが特異点の一つに吸い込まれる時、素粒子でさえ分解されることでしょう。そのエイリアンは、結局最後にはカオス的エネルギーの極端に圧縮された球と成り果てるのです。

ワームホールは数学的には存在可能ですが、エイリアンの宇宙旅行にはどんな希望にも助けにもならないのです。最も小さな物理的実体でさえ、ワームホールを通過してそのまま存続することはできないでしょう。どこにおいてもワームホールに接近することは、破壊と死を意味するのです。

バイオスフェア (生物圏)実験は失敗で終わった

ヒュー・ロス

宇宙の旅行者たちが地球から独立した環境で自らの生命を維持する能力を調査するテストが、アリゾナ砂漠で行なわれました。(www.bio2.eduを参照のこと) 1991年に、8人の成人からなるチームが2年間1万3,000平方メートル(約3,900坪)の“カプセル”の内部に密封されました。1994年にも、7人のチームが半年間の実験のために、この密封された実験室に入りました。食事と水と酸素の維持のために、また老廃物のリサイクルのために必要な植物や動物がすべて彼らと一緒に密封されました。これらの実験の課題とされたのは、密閉された居住環境における、食料の質と量、そして生活の質を維持することです。

残念なことに、その課題をクリアするのはあまりにも大変なことであることがわかりました。酸素のレベルがあまりにも低下し、亜酸化窒素のレベルがあまりにも上昇したために、各成分の混合を管理しながら、空気を導入しなければなりませんでした。鳥や動物のほとんどすべてが死にました。昆虫の大部分も死にました。しかし、ゴキブリとアリは生き残りました。菜食を選択せざるを得なくなると、バイオスフェア居住者は、彼らが穀物の十分な収穫高を上げることができないことを見出しました。ついには、食物をこっそり持ち込まねばならなかったのです。

バイオスフェア実験の最も予期せぬ問題は、心理学的なものでした。これらのプロジェクトの目標に対する冒険心や献身の念は、最初の数週間、人々を団結させました。しかし、その後、退屈さや幽閉状態や孤立していることが、深刻な不満と不和に導いたのです。特に2年間滞在した人々は、解放の日が早過ぎたとは決して言いませんでした。ディスカバリー誌の編集者たちが火星への有人ミッション案に関して、最近論評したように、「7人の宇宙飛行士がカプセルの中に9ヶ月間も閉じ込められるなら、殺人事件に繋がるあらゆる状況に出会います。」(William Speed Weed, “Can We Go To Mars Without Going Crazy?” Discover [May, 2001], 38.)

もちろん、宇宙旅行での課題は、地球に設置したバイオスフェアでの課題を遥かに凌駕するものでしょう。地球の大気や磁界は、バイオスフェアを隕石と放射線から守ります。地球の資源を利用できることが、生態学的に全面的な破局が起きないようにしています。バイオスフェア居住者は、何か死滅的な問題が起っても、ほんの数分ですぐ救援に駆けつけてくれることを知っているという、心理的な利点があります。この利点の重要性を評価し過ぎることはありません。

実際の宇宙旅行では、人工的な重力システムが必要であり、そしてそれは小型で信頼性のあるものなくてはなりません。何千年も経てば、内部においても外部においても、ある種の障害は必然的ですので、修理や脱出装置が必須となるでしょう。予備の部品や装置や生活必需品を載せた支援船団が解決してくれるかも知れませんが、そのような船団を統合したり、ある船から別の船に物や生き物を移送したりすることには、まったく圧倒的な複雑さが伴います。

UFO信奉者の伝承に出てくる極めて小さな円盤は、お粗末なほどに宇宙旅行に必要な条件に達していません。そのような円盤が母船から送り出された艦載機であると(SF的な思想において)一応想像では考えられることではありますが、その母船がどうやって天文学者たちにずっと気付かれずに済んだのかと不思議に思えます。

いろいろな生態学的な、あるいは天文学的災害を切り抜けて生き延びることに関してなら、宇宙船が大きいほど望ましいことです。エイリアンにとっての最良の戦略は、可能な限り最大の宇宙船を送り出すことでしょう。しかし、推進力に関して言えば、より大きなことは、また事態をより悪化させます。今日までの研究では、エイリアンにとって星間宇宙に輸送手段を利用して自らを移送するよりも、彼らの惑星系全体を移動することを試してみる方が遥かに具合がよいことが示唆されています。

Updated: 2006 年 11 月 11 日,01:10 午前

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