エイリアン遭遇体験を検証する


“コンタクティー(エイリアンとの遭遇体験者)運動”は、空飛ぶ円盤現象に対する直接的な反応として、1950年代の初期に起こりました。 UFO現象という文脈においては、コンタクティーとは、エイリアンそのものとの直接的で個人的な遭遇(第三種接近遭遇、CR-」)を繰り返したと主張す る個人を指します。これらの人々は、UFOのエイリアンが人類全体に重要なメッセージを伝えるために選んだ人間と接触したのだと、主張します。40年以 上にわたって、この運動は流行したり衰退したりしましたが、現在オカルトを基礎に持つ宗教に深く根付いています。この論説では、この運動の発展をオカル ト的な宗教運動として簡潔に辿ることによってコンタクティー体験を検討し、典型的な遭遇のプロセスを調査し、この異常なUFO関連の現象をキリスト教の 立場から検証することにしましょう。

UFOコンタクティーの歴史

UFO(未確認飛行物体)コンタクティー運動は、1950年代における空飛ぶ円盤世代の絶頂期に現れました。この運動は、実際には地球外生命体 に関するオカルト的な信仰や教えの延長であって、約200年にわたって現れたいろいろなグループや個人が融合したものでした[1]

200年にわたって作り上げられた運動

  空飛ぶ円盤世代の200年前、スエーデンの科学者であり神秘主義者でもあったエマニュエル・スエーデンボルグ(1688-1772)は、 Earths in the Solar World(1758)という著作を出版しました。(訳注:邦訳は、「宇宙間の諸地球」というタイトルで、静思社から出版されている。)その中で、彼は 太陽系の内外の惑星を旅行したと明言しました[2]。彼は、それらの旅行で地球外生命体と遭遇したと主張し、それらの文明に特徴的な詳細を述べています。スエーデンボ ルグが主張した遭遇体験が、事実上科学的な根拠に乏しく、霊的なものであることは明白です。  

スエーデンボルグの地球外生命体との遭遇体験は、心霊的な、あるいはオカルト的な方法によって行われたことは明らかなことです。スエーデンボル グは空飛ぶ円盤について何も語らなかったが、そのことは彼に必要でなかったからに過ぎません。遭遇現象を大規模に研究した宗教学者のJ. ゴードン・メルトンは、こう説明しています。

「19世紀と20世紀初頭における、地球外生命体とのコンタクトの大部分は、降神術に関連して、また恐らく降神術の集会において起こりました。そ のようなコンタクトの主要な様式は、心霊研究家にはとても馴染みのある現象、すなわち、「体外離脱」でした。体外離脱を経験している人は、肉体と意識が 分離している感覚を持ちます。肉体はある場所に留まったままですが、意識は旅をして回ります。このように、スエーデンボルグや霊媒たちは、トランス状態 になり、いろいろな惑星を旅して回ることができたのです。」[3]

地球外生命体との遭遇体験を語った、もう一人のオカルトの指導的な人物は、ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー夫人(1831-1891)でし た。彼女は、1875年に影響力のある「神智学」というオカルト宗教を設立しました。[4]ブラヴァツキーは、元々死者との接触を試みる霊媒でしたが、「高められたマスター」への信仰を中心とする新しいオカ ルト宗教を発展させたのです。[5]これらの高められたマスターたちは、人間と神との中間に位置する超自然的な存在で、一種の階級構造を構成していま す。神智学の提唱者は、高められたマスターたちが人間の霊的な進化が継続するように助けたり、導いたりしていると信じていました。これらのマスターたち のリストには、他の惑星の生命体も含まれていました。そういうわけで、ブラヴァツキーはオカルト的な方法によって地球外生命体と交信したと主張しまし た。彼女は、高められたマスターに自らが「炎の主」や「この世の主」と呼んだ存在をも含めました。[6]   このような神智学協会から派生したものとして、オカルトを基礎にしたI AM(アイ・アム)運動が、1930年代にガイ、エドナ・バラード夫妻によって設立されました。[7]アイ・アム運動は、ブラヴァツキーが主張したものと同一の高められたマスターたちからの段階的な啓示への信仰を主張 しました。しかし、ガイ・バラードは、地球外生命体からの啓示をこの運動における最も重要なものと位置付けたのです。アイ・アム運動は、オカルト的な手 法でエイリアンからの啓示のメッセージを中心に置いた最初の宗教であると思われます。[8]

1920年代に出版された「ザ・ウランティア・ブック」(The Urantia Book)では、多数の地球外生命体、あるいは人間を越えた存在から自動書記によって与えられたメッセージが掲載されていると主張されました。実際にそ れを記録した人は匿名のままです。自動書記とは、媒介する人が霊的な世界からのメッセージを記録するというオカルト的なやり方です。「ザ・ウランティ ア・ブック」では、2000ページ以上にわたって、地球(ウランティア)の宇宙史に関する未知の真理について、さらにイエス・キリストのいのちと使命と 教えに関する新しい啓示や解釈が明らかにされているということです。[9]地球外生命体のメッセージが載せられているとされた「ザ・ウランティア・ブック」は、今日のUFOの狂信的な信者た ちの間では大変に人気のある本です。   このような初期の遭遇体験の運動をどのように歴史的に追跡すべきかについては、学者たちの意見は完全な一致を見ているわけではありません。しか し、それらの主な交信手段のすべてがオカルト宗教に根を持つことについては、一致しています。また、遭遇体験運動の提唱者たちの地球外生命体との接触に 関して大まかなパターンがあります。次に挙げる三つの点を考えてみましょう。[10]

1. エイリアンは、主として近隣にある惑星(特に火星や金星)から来ていると言われている。

2. エイリアンのメッセージは、心霊的な経験を通して伝達される。特に、今日では一般に「チャネリング」と呼ばれる方法によって、「霊媒」を通して伝達され る。

3. エイリアンと交信している時、コンタクティーたちはテレパシー(心から心へ直接的に通信すること)を使用した。   キリスト教弁証家やニュー・エイジ信仰の専門家であるエリオット・ミラーは、チャネリングを次のように定義しています。「超常的な情報を受けた り、霊的な現実を直接的に経験したりしようとする意図で、人間の霊媒を媒介にして、故人や人間を越えた知性(通常、霊的存在)との交信を試みる手段であ る。」[11]皮肉なことに、ニュー・エイジの陣営で広く使用されている「チャネリング」という用語は、コンタクティーたちが 最初に使用したものです。[12]ジョン・A・サリバは、コンタクティーのチャネリングと降神術との密接な類似点を次のように説明しています。 「コンタクティーたちは、降神術の霊媒に似ています。前者は地球の存在ではない崇高なものから、後者はやはりこの地上に存在しない死者の霊からメッセー ジを受け取るのです。」[13]   コンタクティー運動の初期に影響を与えた人物や団体はエイリアンとのチャネリングを主張しましたが、空飛ぶ円盤や地球外生命体からの個人的な訪 問については、特別に語っていたわけではありません。そのような異常な主張をするようになったのは、1950年代の大胆不敵なコンタクティーたちなので す。

物議をかもした1950年代の二人のコンタクティーたち 「地球外生命体の時代」は、1950年代の最も有名な空飛ぶ円盤とのコンタクティーであるジョージ・アダムスキー(1891-1965)によって先導さ れました。[14]南カルフォルニアに住んでいたアダムスキーは、オカルトと心霊運動と長い関わりがあり、1930年代に他世界の 存在に関するフィクションを書いています。1950年代の初期、空飛ぶ円盤時代の絶頂期に、アダムスキーは地球外生命体と遭遇したと公表しました。「オ ルソン」という長髪の金星人がカルフォルニア砂漠で彼に現れたと、主張したのです。それ以来、地球外生命体の訪問と交信が定期的にあったというのです。 [15]アダムスキーは「オルソン」を次のように描いています。

「それは、丸顔でとても額が高かった。灰色がかった緑色をした大きな目は落ち着いて見え、外側が両方とも少しつり上がっていた。頬骨は、西洋人 より少し高かったが、インデアンや東洋人ほど高くはなかった。鼻は上品に輪郭が整っていたが、目立つほどに大きくはなかった。口は普通のサイズで、美し い白い歯は、微笑んだり、話したりする時に輝いた。」[16]

アダムスキーは、数え切れないほどに空飛ぶ円盤に乗り、「スペース・ブラザー」と呼ばれる慈悲深い存在が居住している近隣の惑星に旅行したと主張 しました。その旅行中に、彼は金星人や火星人や土星人との会合を持ち、「銀河会議」にも出席したということです。[17]アダムスキーは、地球の大気圏を飛行する空飛ぶ円盤が写っていると主張する写真を公開し、配信しました。彼には 「空飛ぶ円盤実見記」 (Flying Saucers Have Landed,1953)、「空飛ぶ円盤同乗記」(Inside The Flying Saucers,1955)、

「空飛ぶ円盤の告別」(日本語訳出版題名は「空飛ぶ円盤の真相」)(Flying Saucer Farewell,1961)という著作があり、これらによって彼は裕福になったのです。ある研究者の言葉によると、「オカルトの分野で世界的に重要な 著名人となったのです。」[18]

1950年代のコンダクティー運動、特にアダムスキーは、未確認飛行物体現象の真面目な研究者たちを困惑させました。結局のところ、アダムスキー が提示した情報や主張、特に彼の物的証拠なるものは、科学的で論理的な吟味に長く持ちこたえることはできなかったのです。少なくともある程度において は、彼が悪質ないたずら者であり、詐欺師であることが暴露されたのです。[19]晩年においては、アダムスキーの信用はほとんど失墜しましたが、彼のコンダクティーとしての主張は多くの人々を 鼓舞し、より大掛かりなコンダクティー運動に導いたのです。アダムスキーから次の世代に引き継がれたこのオカルト宗教の影響は、現在まで続いています。

1950年代の論議を呼んだもう一人のコンタクティーは、ジョージ・ヴァン・タッセルでした。[20]ヴァン・タッセルは航空産業の背景を持つ人物でしたが、カルフォルニア砂漠に移転して、1950年代の初期に 様々なエイリアンとコンタクトしたと主張しました。ヴァン・タッセルは、いろいろな宇宙船のエイリアンの船長からテレパシーによってメッセージを受けた と主張しました。[21]彼がコンタクトしたエイリアンの一人は、「アシュター」と呼ばれました。このアシュターが、コンタクティーたち の間で最も広範にチャネリングされている地球外知的生命体の一人なのです。[22]ヴァン・タッセルによれば、「ソルガンダ」と呼ばれるエイリアンが彼に宇宙船を見学することを許可し、老化過程 を逆転させてタイム・マシンとして稼動する機械を組み立てるという途方もなく重要な任務を彼に与えたのです。[23]彼の著書である「私は円盤に乗った」(I Rode in a Flying Saucer、1952)では、彼の異常なコンタクティー体験が公開されています。

1960年代の初頭ごろには、コンタクティー運動の流行はピークを迎えましたが、それに続くUFOと関連を持つオカルト宗教の各グループは、自分 たちの勢力の囲い込みを企てました。このようなことが可能であったのは、東洋的な神秘主義やニュー・エイジの考えや教えが西欧でより広範に受容されるよ うになっていたためです。しかし、典型的なコンタクティーの体験やUFOに関連する宗教団体の教義を分析すると、彼らの主張がいかに根拠に欠けたもので あるかが明白となります。

典型的なコンタクティー体験

コンタクティー現象全体の本質の中心にあるものとは、宇宙の実在者が人類と交信することを熱望しているという見解です。これらのエイリアンは、自 らと人類がコンタクト(チャネル)する点となるような特定の個人を用心深く選びます。コンタクトには、基本的に二つの方法が使用されます。[24]

特に1950年代初期のコンタクティーは、エイリアンと顔を突き合せるように身体的な遭遇をしたと主張しました。これらのコンタクティーは時々、 金属製の宇宙船に乗って、スペース・ブラザーたちとともに太陽系を旅したと報告しました。その中の何人かは、その異常な体験を裏付ける証拠を提示すると 主張しました。例えば、アダムスキーは宇宙船の写真を証拠として提出しました。しかし、決定的な物的証拠がそのような遭遇体験から出たことは一度もあり ませんでした。

もっと典型的なタイプは、心霊的、あるいは超常的な方法で地球外生命体からメッセージを受けるコンタクティーです。[25]選ばれたコンタクティーは、他世界や恐らく異次元からのエイリアンの情報を媒介する伝達経路としての決定的に重 要で特権的な任務が与えられるのです。この徹頭徹尾オカルト的な経験は、テレパシーによって地球外生命体からメッセージや啓示を媒介したコンタクティー を軸として展開します。また、コンタクティーはトランス状態になったり、文書のメッセージを記録(自動書記)したりします。コンタクティーは、「宇宙の 秘密」を託され、時にはエイリアンの「地球上での使節」に任命されるのです。[26]

あるコンタクティーの遭遇は、身体的かつ心霊的な体験であると主張します。しかし、今日では、コンタクティーが主張する体験の大半は心霊的なタイ プです。

エイリアンの特徴

コンタクティーが遭遇したエイリアンの描写には、幅広い多様性があります。[27]コンタクティーたちは、エイリアンの現れ方は多様で、人間や人間に似た生物であったり、動物やロボットであった り、風変わりなものや幻影であったりします。[28]しかし、初期のコンタクティーの幾人かは、はっきりと特定できる詳細な特徴を挙げていました。彼らはしばしば、 エイリアンを北欧的なスタイル、すなわち、大変に美しい外見を持つ人間に似たものと表現しました。例えば、彼らは、背が高く、肩まで伸びた金髪があり、 スキー用のつなぎのスーツのようなものを身に付けているというようにです。同時代のコンタクティーの幾人かは、エイリアンをもっと恐ろしく異様な有様で 描きました。[29]これらのエイリアンは一般にグレイズと呼ばれ、背が低くグロテスクな生き物で、大きな頭と吊り上った黒い目を 持っています。

初期のコンダクティーによると、エイリアンは地球の近隣にある惑星、特に金星や火星から来たものでした。現代のコンタクティーは、エイリアンの星 を具体的に特定することにはるかに消極的です。疑いもなく、このように具体的な詳細に欠けているのは、科学的データが蓄積されて、太陽系では地球以外の 惑星に感覚のある生命がまったく存在しないことが明らかになったからです。あるコンタクティーは、エイリアンは遠距離にある銀河、あるいは異次元や霊的 世界から来たのだと報告しています。エイリアンが実際どのようなものであるかに関して、コンタクティーたちには広範囲な描写に満ちています。[30]ある者たちはエイリアンを人間とたいして変わるところがなく、物質的な、肉体のある存在として描きました。他の 者たちは、心霊的な実在や幻影、あるいは霊的存在と説明しました。さらに他の者たちは、前者のように肉体を持つ存在としましたが、存在の形態が高度な霊 的状態にまで進化したものと表現しました。サリバは次のように言及しています。「しかし、多くのコンタクティーは、望遠鏡や現代科学の分野を超えた、異 なる時空次元から来た心霊的な現象であるように、UFOや宇宙人について書いています。」[31]

エイリアンが人類とコンタクトする意図に関して、二つの一般的な見解があります。すなわち、あるエイリアンは慈悲深い意図を持っているが、他のエ イリアンは悪意のある意図を持っていると、コンタクティーたちは主張するのです。ロバート・S・エルウッドとハリー・B・パーティンは次のように述べて います。「少なくとも、これらの驚異的な乗り物の多くに、他世界に存在する崇高で慈悲深い文明人からの使者が乗っていて、愚かな行為に捕らわれている私 たち人間に警告したり、援助を与えたりするために来たのだと、常に彼らは信じているのです。」[32]コンタクティーを通して伝達されたエイリアンのメッセージや啓示はしばしば、道徳的で、霊的で、神学的な禁止命 令や考えが含まれています。あるコンタクティーたちが心の中でエイリアンの慈悲深い意図を確信するのは、通常においてコンタクティーとしての体験が現実 に建設的であるという事実があるからなのです。[33]

最近のあるコンタクティーたちは、人類に無関心であるか敵対的であるエイリアンを描いています。コンタクティーとしての否定的な体験は報告例が少 数ですが、UFO研究家のジョン・キールは、多くの「沈黙せるコンタクティー」が存在すると主張しています。彼らは、キールが「超地球人」と呼ぶ邪悪な 超常的な存在とコンタクトしているのです。[34]キールたちは、これらの知性のあるエイリアンが非道な目的を果たすためにコンタクティーたちを操作し、コント ロールしようとしていると信じています。あるコンタクティーたちは、これらのエイリアンとの交信によって極度に有害な影響を受けたと報告しています。

コンタクティー現象のキリスト教的評価

コンタクティー体験は、奇妙で複雑な現象です。この現象を最初から50年以上にわたって調査すると、個々のコンタクティーと彼らの異常な主張を 評価する時に、社会学的な要素と心理学的な要素が作用していないだろうかと疑問に思うに違いありません。[35]恐らく、彼らの経験は本当にあったものでしょう。しかし、それらはまったく個人的であり、主観的なもののようで す。社会学者たちは恐らく、コンタクティー自身の主観的な体験においてのみ、何かが実際に起こっていると主張するでしょう。

宗教的な特徴

すでに議論したように、コンタクティー運動の宗教的なルーツがオカルトにあることは明らかなことです。それは、スエーデンボルグ主義や降神術や 神智学やアイ・アム(高められたマスター)運動のような諸運動によって、多かれ少なかれ影響を受け、方向付けられてきました。さらに、ジェローム・ク ラークが論評しているように、コンタクティーは通常、「オカルティズムやニュー・エイジ主義と関与しているという歴史を持っているのです。」[36]コンタクティー体験は、直接的なオカルト、あるいは超常的な信仰や実践を含むのです。これらの特定的なオカルト の信仰や実践には、次のようなものが含まれます。エイリアン(心霊的あるいは霊的存在)との霊媒によるトランス状態でのチャネリング、自動書記、テレパ シーによる交信、念力移動(テレポーテーション)、非物質化、空中浮遊、念力。[37]   道徳的にも霊的にも人間より優れていると考えられているエイリアンとのコンタクトは、既存のものに代わる新しい霊性(オカルト的で神秘主義的な もの)を与えます。それは、伝統的な宗教、特にユダヤ教やキリスト教の聖典に明らかにされた信仰や教義に取って代わろうとしているのです。コンタク ティー体験の宗教的な面やそこから生じたオカルトに根差した宗教は、通常は伝統的な宗教において特徴的に見られるような特質の多くを提供しています。 UFOや地球外生命体を基礎に置く宗教に関与する人たちは、賢明で慈悲深い天上の存在からの「上からの救済」を探し求めるのです。コンタクティーを介し て伝達されるエイリアンのメッセージと啓示は、彼ら自身に道徳的で霊的な導きや人生の方向性を与えてくれるのです。UFOを基礎に置いた宗教の追随者 は、人生における究極的な疑問に対する答えを、神にではなく、これらの地球外知的生命体に求めるのです。サリバは、UFO現象の宗教的な性格を次のよう に簡潔に描写しています。

「UFOの最も人の心を動かすような面の一つは、宗教的な内容と構造です。UFOは、幾つかの理由で容易に宗教として機能できるのです。それら は、人生における重要な問題、またしばしば根本的な問題を取り扱うのです。それらは、神々や超自然的なヒーローや天使や悪霊のような伝統的な宗教に出て くるものに似た存在に言及するのです。それらの存在は、現代科学的に探知できるものではないので、霊的なものか超人間的なものであるようです。少なくと も、七つの大きな宗教的テーマや要素がUFO目撃やコンタクトの報告を特徴付けています。[38](1)未解明であること、(2)超越的であること、(3)霊的な存在に対する信仰、(4)完全であること、 (5)救済、(6)世界観(宇宙の意味や目的を定める)、(7)霊性   UFOに宗教的な魅力を付与するメッセージの内容や外見的な構造にもかかわらず、コンタクティー現象の真相を周到に精査すると、少なくとも二つ の点が明らかになります。第一には、宗教体系としては、その主張を裏付けるような条件を満たした証拠が欠けていることです。第二には、UFOコンタク ティー現象は、歴史的なキリスト教の教義と対立していることです。

歴史的なキリスト教の教義との対立

  しかし、この現象の全体像をどのように説明したとしても、コンタクティー体験に浸透しているオカルトの実践は、歴史的な正統的キリスト教に対立 しているのです。コンタクティー現象のまさに中心にある、トランス状態での霊媒によるチャネリングを、聖書は明らかに非難しています(申命記18:9 -12,15、。歴代誌10:13-14、イザヤ8:19,20、使徒16:16-18)。神のことばは、こんな行為に対してはっきりと警告を発してい ます。「あなたがたは霊媒や口寄せに心を移してはならない。彼らを求めて、彼らに汚されてはならない。わたしはあなたがたの神、主である。」(レビ 19:31)新しい傾向を持つ心霊術に過ぎないチャネリングは実際、異教的な宗教に深く根差しています。エリオット・ミラーは次のように説明していま す。

「申命記18:9-14は、降神術が聖書の預言とはまったく関係がないだけでなく、多分に当時の異教信仰と関連のあることを示しています。事実、 降神術は歴史的に見て、事実上すべての形の異教信仰である役割を果たして来ました。降神術で霊たちに身体を委ねる者は、いろいろな名前で呼ばれて来まし た。例えば、シャーマン、まじない師、祈祷師、神官、占い師、予言者などです。私たちの文化において共通した用語は「霊媒」でしたが、近年ではこの用語 はほとんど使用されず、「チャンネル」とか「チャネラー」という用語が優勢になっています。それは、部分的には長年にわたる霊媒という用語に伴う否定的 な固定観念を打破したいという願いの反映です。」[39]

歴史的なキリスト教神学は、コンタクティー体験に共通するいろいろなオカルト行為を全面的に非難して来ました。霊媒やチャネリングに加えて、聖 書は占いを明白に禁じています。占いには、オカルト的な方法で未来を予言したり、秘伝的な(秘密のあるいは禁じられた)知識を手に入れたりすることも含 まれます(申命記4:19、イザヤ47:13-15、44:24-25)。聖書的な観点から言えば、これらのことを行うことは神が嫌悪されるものです。 また、これらと関与することは、コンタクティーやその追随者たちにとって、悪魔的な影響が直接的にかつ危険な形で及ぶ門戸を開くことになるのです。悪魔 的な領域(サタンに従属する、諸々の邪悪な超自然的な存在)を否定する現代的発想を持つ多数の者たちとは異なって、聖書の知識のあるクリスチャンは、サ タンや彼が所有する堕落天使たちの軍勢の現実性を十分に知っています(ヨブ1:6-12、エゼキエル28:11-19、マタイ4:1-11、ヨハネ8: 44、「コリント4:4、エペソ6:11-12、ヤコブ4:7、。ペテロ5:8、「ペテロ2:4、ユダ6)。

コンタクティーたちは、時によっては実在するものと本当のコンタクトを体験しているのかも知れません。しかし、そのような場合には、その実在と は、実際は聖書が暗闇の力と呼んでいる存在なのです(エペソ6:12)。このようなチャネリングは、事実上それに関わる人たちの心と身体の支配権をその ような邪悪な存在に譲り渡すので、彼らはそれらに対して高い感受性を示すようになり、ある場合は実際に悪霊に取り憑かれることもあり得るのです(マタイ 4:24、9:32-34、12:22-24、マルコ3:7-12、ルカ11:14-26)。これらのコンタクティーたちは、恐らく知らずにでしょう が、神によって禁じられた情報源から啓示を求めているのです(出22:18、「列王記21:6、エゼキエル13:9、ゼカリヤ10:2)。さらに、神は 次のように警告しておられます。「霊媒や口寄せのところにおもむき、彼らを慕って淫行を行う者があれば、わたしはその者から顔をそむけ、その者をその民 の間から断つ。」(レビ20:6)これらのコンタクティーたちは、精神と身体と霊において恐るべき破滅の危険へと走り急いでいるのです。

歴史的なキリスト教の観点から言えば、コンタクティー現象の背後に本当に悪霊たちがいるのでしょうか。この質問に対して、聖書が明白な根拠に基 づいて断定的に答えてくれます。第一に、新約聖書は、「サタンさえ光の御使いに変装する」(「コリント11:14-15)と指摘しています。第二に、サ タンはまた「あらゆる偽りの力、しるし、不思議」を行うことができます。さらに、世の終わりが近づくと、サタンは偽キリストや偽預言者たちに影響力を吹 き込んで、「できれば選民をも惑わそうとして、大きなしるしや不思議なこと」(マタイ24:24)をさせます。黙示録を解釈する一つのアプローチによれ ば、終わりの時にサタンの企みの延長である「獣」や「偽預言者」がどのようにして「大きな奇跡的しるし」を行うかが、何度か記されています(黙示録 13:13、16:14、19:20)。偽りの奇跡に加えて、サタンと彼の手先どもは、未来を予言したり(しばしば正確さから程遠いが、時には驚異的な ほど正確なこともある)、救いの道を宣言したりします。しかし、それは救いの道ではないのです(使徒16:16)。悪魔の勢力が目指す目標はいつも、 人々を欺いて信仰を捨てるようにしむけ、究極的には世界が行くべき道を踏み外してさ迷うように導くことです(。テモテ4:1、黙示録12:9)。  

UFOに基礎を置いたある宗教は、イエス・キリストを地球外生命体に仕立て、[40]チャネリングによってキリストからメッセージを受けたと主張します。この主張は、歴史的なキリスト教が主張して きた真理に真っ向から対立する挑戦なのです。イエス・キリストに関して、さらに啓示が必要であるわけはないのです。福音的なキリスト教が公言しているよ うに、聖書はすでに付与された究極の神の啓示なのですから(。コリント4:6、「テモテ3:16、「ペテロ1:20,21)。ユダ書にあるように、信仰 (キリスト教の基礎的な真理や教義)は、「聖徒にひとたび伝えられた」(ユダ3)のです。新たな啓示の必要がないばかりか、コンタクティーたちのいわゆ る啓示は、しばしば聖書の啓示と相反しており、そのことは誤りの確かなしるしなのです(。コリント11:4、ガラテヤ1:8-9、。テモテ4:1、6: 3、テトス1:9、「ペテロ2:1、。ヨハネ2:22-23、「ヨハネ7-11)。

しばしば、コンタクティーによって与えられる霊的なメッセージや啓示は、神、罪、救い、聖書についての歴史的キリスト教の教義を真っ向から否定し たり、矛盾したりします。「ザ・ウランティア・ブック」にある諸々の啓示を含む、UFOを基礎とする宗教は、イエス・キリストを神であり人でもあるとい うような正統的なキリスト論をきっぱりと拒絶します。こうして、彼らは宇宙の主や復活された世の救い主を否定するのです。「ザ・ウランティア・ブック」 やイセリアス協会(最も古くて、最も有名なUFO宗教)の背後にいるチャネラーのようなコンタクティーからもたらされる神学的なメッセージは、しばしば 多元的であり(すべての宗教は真理である)、モニズム的であり(すべての実相は同一である)、普遍主義的(神のさばきはない)であり、その内容は神秘主 義的です。こうして、聖書の教えよりもニュー・エイジの神秘主義と密接に一致しているのです。[41]UFOに基礎を置いた宗教に見られる世界観は、神のかたちに造られた人間、堕落した罪人としての人間、罪の贖い の必要性、そして、神の恵みが絶対的に必要であることというような聖書的な特色がないように思えます。

全体として、コンタクティー体験の宗教的な特徴には、歴史的なキリスト教とは根本的に異なった世界観が見られます。いつものように、聖書の警告に 心を留めるのが賢明です。「愛する者たち。霊だからといって、みな信じてはいけません。それらの霊が神からのものかどうかを、ためしなさい。」(。ヨハ ネ4:1)「すべてのことを見分けて、ほんとうに良いものを堅く守りなさい。」(。テサロニケ5:21)すべてのことを見分けてください。あの小さな緑 色のエイリアンたちをも。

引用文献

1 J. Gordon Melton, “The Contactees: A Survey,” The Gods Have Landed.Edited by James R. Lewis (New York: State University, 1995), 2-7.

2 Jerome Clark, The UFO Encyclopedia,vol. 1, 2d ed.(Detroit: Omnigraphics, 1998), s.v., “Contactees.”

3 Melton, “Contactees,” 4.

4 Melton, “Contactees,” 6; Clark, s.v., “Contactees.”

5 Ron Rhodes, New Age Movement(Grand Rapids: Zondervan, 1995), 25; Melton, “Contactees,” 6.

6 Melton, “Contactees,” 6.

7 Rhodes, 26.

8 Melton, “Contactees,” 7.

9 Elliot Miller, “Channeling Spiritistic Revelations for the New Age” Part 1, Christian Research Journal(Fall 1987): 11; William M. Alnor,UFOs in the New Age(Grand Rapids: Baker, 1992), 196-98.ザ・ウランティア・ブックの背景や評価をさらに知りたい方は、キリスト教弁証家のEric Pement’s review of Martin Gardner’s book Urantia: The Great Cult Mysteryin Eric Pement, “Urantia: The Great Cult Mystery,”Christian Research Journal(Fall 1996): 48-49を参照のこと。

10 Melton, “Contactees,” 7-8.

11 Elliot Miller, A Crash Course on the New Age Movement(Grand Rapids: Baker, 1989), 141.

12 J. Gordon Melton and George M. Eberhart, “The Flying Saucer Contactee Movement, 1950-1994: A Bibliography,” The Gods Have Landed.Edited by James R. Lewis (New York: State University, 1995), 252.

13 John A. Saliba, “Religious Dimensions of UFO Phenomena,” The Gods Have Landed.Edited by James R. Lewis (New York: State University, 1995), 27.

14 Clark, vol. 1, s.v., “Adamski, George.”

15 Alnor, 87-89.

16 As cited in UFO: The Continuing Enigma(Pleasantville, New York: Reader’s Digest, 1991), 72.

17 Alnor, 88.

18 Clark, vol. 1, s.v., “Adamski, George.”

19 Clark, vol. 1, s.v., “Adamski, George.”

20 Alnor, 89-90; Jerome Clark, The UFO Encyclopedia, vol. 2, 2d ed. (Detroit: Omnigraphics, 1998), s.v., “Van Tassel, George W.”

21 Clark, vol. 2, s.v., “Van Tassel, George W.”

22 Clark, vol. 1, s.v., “Contactees.”

23 Clark, vol. 2, s.v., “Van Tassel, George W.;” Alnor, 89.

24 Clark, vol. 1, s.v., “Contactees.”

25 Clark, vol. 1, s.v., “Contactees.”

26 UFO: The Continuing Enigma, 75.

27 Saliba, “Religious,” 27.

28 This is Alvin Lawson’s typology of alleged alien appearances as cited in Saliba, “Religious,” 23-24.

29 Saliba, “Religious,” 23.

30 Saliba, “Religious,” 25.

31 Saliba, “Religious,” 25.

32 Robert S. Ellwood and Harry B. Partin, Religious and Spiritual Groups in Modern America,2d ed. (Upper Saddle River, New Jersey: Prentice Hall, 1988), 111.

33 Melton and Eberhart, “Flying Saucer,” 252.

34 As cited in Clark, vol. 1, s.v., “Contactees.”

35 See John A. Saliba, “UFO Contactee Phenomena from a Sociopsychological Perspective: A Review,” The Gods Have Landed. Edited by James R. Lewis (New York: State University, 1995), 207-50.

36 Clark, vol. 1, s.v., “Contactees.”

37 Melton, “Contactees,” 7-8.

38 Saliba, “Religious,” 41.

39 Miller, “Channeling,” 10.

40 イセリアス協会によると、イエス・キリストは金星人とされている。 Clark, vol. 1 s.v.を参照のこと。ザ・ウランティ・ブックでは、イエスは地球外生命体であり、その特徴や教えや使命を根本的に変えている。Clifford Wilson and John Weldon, Close Encounters: A Better Explanation(San Diego: Master, 1978) 233-41を参照のこと。

41 コンタクティーの啓示がどれほどオカルトやニュー・エイジ思想と一致しているかについては、Wilson and Weldon, 311-19; and Miller, Crash Courseを参照のこと。

Updated: 2006 年 11 月 02 日,06:57 午後

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